2021.01.15 【電子材料特集】各社の事業展開クラレ
池森 執行役員
クラレは、耐熱性ポリアミド樹脂「ジェネスタ」を事業化し、電気・電子分野のコネクタ向けや、自動車関連(車載電装/自動車耐熱部品)を中心に実績を拡大している。
ジェネスタ(PA9T)は、同社が世界で初めて工業化したノナンジアミンを使用したポリアミド樹脂。耐熱性、低吸水性、耐薬品性など優れた特徴を持つ。①優れた耐熱性(融点306度と高く高温時物性に優れる。はんだ耐熱性270度)②低吸水性。以上により、表面実装時のブリスタ発生を防ぐ。ほかに、③優れたしゅう動性 ④優れた成形性など。これらの特性が評価され、年々販売規模を拡大している。
20年度(12月期)のジェネスタ販売数量は、コロナ禍の影響を受けながらも巣ごもり関連やDDR向けの需要増などを背景に、電気・電子分野が好調に増加し、全体では2桁の増加となる見通し。ジェネスタの強みである低吸水性と高強度のバランスの良さが評価され、新規案件が増加した。
21年度についても、「5G対応のDDR向けや、車載関連、産機系の高電圧用途などでの需要拡大が見込めると考えている」(池森洋二執行役員イソプレンカンパニー ジェネスタ事業部長)とし、前年比で1割以上の販売数量増を見込んでいる。
高電圧用途では高耐トラッキング性能が評価され、電鉄用IGBTモジュール向けの採用も増えている。EV向けでは、BMSコネクタ用やインバータ用フローティングコネクタ用途などの販売が拡大している。
自動車の大型部品用途では、冷却バルブや冷却チューブ、エンジンマウントなどをターゲットとし、他樹脂からの代替も含め、事業を拡大していく計画。
新製品開発では、耐熱性をPA9Tよりもさらに高めたナイロン系(PA系)樹脂の銘柄開発を進めており、サンプルワークも開始した。
同社は顧客に対し、設計段階からのソリューション提供を方針に、筑波のCAE解析機能を活用し、金型や部品設計なども含めた提案を行っている。同事業のグローバル展開では、現在、世界9カ国11拠点に販売や技術サービスの担当者を配置している。