2021.03.05 太陽光発電の拡販、地銀と連携地域企業とつなぐ「窓口」に、オリックスなど

「スーパーマーケットバロー下恵土店」に設置された太陽光発電設備

オリックスが、スーパーマーケットで導入したPPAモデルのイメージオリックスが、スーパーマーケットで導入したPPAモデルのイメージ

 太陽光発電設備の普及に向けて、販売会社が全国の地方銀行と提携を結ぶ例が出てきている。国際的な「サステナブル経営」への関心の高まりや、発電設備を導入しやすい仕組みなどが広がり、地域の企業が自家消費用に設置する担い手として重要視されている。地元企業に精通する地銀を「窓口」にして、拡販の弾みにする狙いがある。

 開発・運営する太陽光発電施設の設備容量が1000MWに達し、国内最大規模の事業者となっているオリックス。同社が、顧客紹介の業務契約を結んだのが、津市の百五銀行だ。電力需要家の屋根や敷地などに太陽光発電システムを設置して、発電した電力を供給する第三者所有(PPA)モデル事業の普及を図る。

 09年から始めた電力小売り事業では、信用金庫なども含め全国の約100の金融機関と提携してきた素地がある。PPA事業については、オリックスが金融機関と提携するのは初めてだが、「百五銀行を皮切りに広げていきたい」(オリックス)として、今後も各地で提携を模索する方針だ。

 事業では、オリックス側が費用負担して、企業の施設などに太陽光発電設備やリチウムイオン蓄電池などを設置・運営。手掛ける電力小売りを通じて、発電した電力を自家消費してもらい、その電気料金から収益を得ていく。

 百五銀行には、主に東海地域の取引先や顧客の中で、PPAに関心を持っている企業の紹介を受ける。PPAモデルによる再エネの導入提案を通じて、企業の二酸化炭素(CO₂)排出量削減や、BCP(事業継続計画)をサポートしていく。

 地銀との提携について、「(地銀は)地域の信頼を得ており、各地域に根付いた企業にPPAモデルを普及させることができる」(オリックス)点などがメリットだという。

急拡大する市場規模

 オリックスは19年12月にPPA事業に参入。20年8月、第1号として岐阜県と静岡県の商業施設2店舗で稼働を始めた。「スーパーマーケットバロー下恵土店」(岐阜県可児市)で設備容量約440kW、「スーパーマーケットバロー三園平店」(静岡県富士宮市)では同約190kWを導入している。

 調査会社の富士経済(東京都中央区)の予測では、17年度以降に国内で本格的な市場ができたPPAモデルの市場規模は、19年度の58億円から30年度には1571億円に急拡大するとされる。オリックスは事業拡大の足掛かりの施策の一つとして、金融機関との提携に乗りだした。

 同社は、地熱や風力発電などにも積極的に取り組んでいるほか、工場や倉庫、店舗などの省エネ課題に対して、包括的なサービスを提供し経費の削減実績から報酬を得る「エスコ事業」も手掛ける。オリックスグループ広報・渉外部は「PPAモデルは、全国で広がるエネルギーの地産地消のキーワードになる」と話す。

地域企業の課題解決を後押し

 既に全国各地で地銀と連携を進めているのが、太陽光パネル開発などを手掛けるソーラーフロンティア(東京都港区)だ。21年1月下旬に、群馬銀行(前橋市)と協業し、同銀行から紹介を受けた企業などに、自家消費型の太陽光発電設備などの導入を通じて、脱炭素化や電気料金の削減などを提案する事業を始めた。

 ソーラーフロンティアは、石油元売り大手の出光興産の100%子会社。銅などを主成分とした化合物半導体系の「CIS薄膜太陽電池」を世界で唯一、量産し販売するなどの強みを持つ。

 地元企業が抱える課題を把握する地銀の顧客に、ニーズに合った導入策や継続的なサポート法などを提案し、企業の課題解決を後押ししていく。

 19年11月以降、各地の地銀などと連携を進め、20年10月には千葉銀行(千葉市)や百十四銀行(高松市)と同様に協業する契約を締結した。他の地銀とも既に協業を始めているという。

 ソーラーフロンティアコーポレート管理部は「地域の企業でも脱炭素などの関心が高まり、地域に密着した地銀に、相談が舞い込むことも多い。当社のようなメーカーとは全く違う取引先なども持ち、アクセスポイントとして重要だ」と指摘している。