2021.06.03 再エネ関連設備、教育施設に続々夏休みの余剰分を有効活用する仕組み構築も
東京ガスグループが横浜市で展開する事業のスキーム
再生可能エネルギーの普及に伴い、地域の小学校といった教育現場に、蓄電システムなど関連設備が続々と導入されている。避難所ともなる公共施設であり、停電時などの機能を重要視。夏休みなど電力消費が激減する時期があることに着目した全国初の取り組みも計画されている。
電源装置開発・販売を手掛ける「YAMABISHI」(東京都大田区)は5月下旬、太陽光発電と連係するリチウムイオン蓄電システムを三重県名張市の市立小学校10校に導入を終えた、と公表した。再エネの自家消費を目的に設計されたシリーズで、平常時は、発電した電力を消費し、停電時には蓄電システムからバックアップ運転に切り替わる。
同社は最近5年ほどで、50校以上に納入実績があるという。同社営業部は「導入は、地域の避難施設に指定されている学校が多い」と話す。
休日や夏休みなどの長期休暇時には、校内で電力がほとんど消費されないため、発電量を調整する機能が欠かせないという。蓄電池がフル充電されて、発電量が消費量を上回ると、余剰分の電力がつながれた系統に戻るように流れる「逆潮流」などを起こし、システムが停止してしまうためだ。
同社独自の制御技術で高いスペックの設備の導入も進める。通常の設備では、停電時に蓄電池からの電力供給に切り替えるには、1秒単位の時間がかかる。だが、今回導入したシステムでは、その約200分の1の時間に短縮。「人が停電を認識できないほどの瞬間」(同社)で切り替わり、デジタル製品などに影響を及ぼさないという。
従来は精密機器の多い工場などで導入するシステムに付加した機能。だが、作業中のデスクトップパソコンなどにも影響を与えずに済み、同社は「コロナ禍の影響で学校内にも電気機器が増えている。オンライン授業中でも支障がない」と話す。今年度も約10校から導入の要望が寄せられているという。
余剰分を別施設で活用
一方、横浜市内の市立の小中学校65校に導入するのが東京ガスグループ。設備を無償提供し、学校側は発電した電力を購入していくPPAモデルだ。22年3月と23年3月からの2回に分けて運用を始める計画という。
グループの東京ガスエンジニアリングソリューションズ(東京都港区)は、太陽光発電設備(1校あたり平均約60kW)と蓄電池(同平均約20kWh)を設置。保守管理などを一貫して担う。発電電力は学校で自家消費し、余剰分を蓄電池に充電。夜間や雨天時に利用する。その効果で、1校あたり二酸化炭素(CO₂)の約2割が削減でき、全校で年間1700トンのCO₂削減を見込めるという。
さらに、今回は休日や長期休暇中に余る発電量の有効活用に着眼した。その余剰分を市内の別の公共施設に送って、消費を賄う全国初の仕組みをつくる。
グループが持つ遠隔で設備管理する技術を活用。各学校の太陽光設備の発電量と市内の公共施設の電力需要を予測して、蓄電池がフル充電され、発電量が消費量を上回る場合、自動的に系統を利用して、余剰分を離れた別の施設に送電する。自己託送と呼ばれる仕組みで、学校で発電した再エネ電気を無駄なく「100%地産地消」できることになる。送電する電力は年間530MWhに達する見込みという。
東京ガスエンジニアリングソリューションズは「これまでに長らく培ってきた技術を、再エネにも適用できた例だ」と話している。