2021.07.02 【5Gがくる】ローカル5G簡単解説<48>地域課題解決型ローカル5Gビジネスモデル⑥

 前回は、ローカル5Gを利用した地域課題解決型「B2B2X」ビジネスモデルの主役となる〝センターB〟に当たる「地域の業種別サービス提供者」が中心となってデジタルトランスフォーメーション(DX、デジタル変革)戦略を練るのが良い、と述べた。

根拠のある仮説

 その際、4K/8Kや仮想現実(VR)/拡張現実(AR)、人工知能(AI)&ロボットなどを活用し、現場の課題を解決するユースケース(利用シーン)のイメージだけでなく、「根拠のある仮説」を立てる必要性があることについても言及した。

 ただ、根拠となり得るのは、目印の方向に登れば山頂へたどり着くといった結果を導く因果関係、あるいは「ハチが低く飛ぶと雷雨」といった観天望気(かんてんぼうき)などに見る変数間の相関関係となる。

 両者とも、現場にデータがあれば、統計モデル、あるいはニューラルネットワークモデル(ディープラーニング)と呼ばれるAIによって、根拠となるデータを発見できる可能性があり、業界ごとに試行されている。

 さて、最近は地域の酒造業が世界市場を目指していると聞く。しかし、杜氏(とうじ)の高齢化によって潜在していた技術継承問題が浮き彫りになり、業界共通の課題となっているのも事実だ。

 酒造りは「精米」→「洗米」→「浸漬(しんせき)」→「蒸米」という工程を踏んでから「仕込み」工程に入る。この中の浸漬とは、精米した酒米を蒸す前に水に浸し水を吸収させる工程で、その時間の長短によって、次の仕込み工程における発酵に影響が出ると言われている。つまり約1カ月後の味と香りに大きな影響を与えるらしい。

 しかも、米の品種と品質、精米歩合、水温、さらに気候条件などによって、必要な吸水時間も変化するという。そのため、浸漬状態の酒米を目視によって秒単位で水から引き上げるタイミングは杜氏の職人芸となっている。

 これを画像認識が得意な深層学習(ディープラーニング)で継承する、というのが今回の仮説だ。

 杜氏が水から引き上げる直前の酒米の画像データを多量に収集し、その中から酒米の色や形、模様、光沢など特徴量の相関関係を発見できれば、仮説の揺るぎない根拠となるわけだ。

 地域によっては、IoTやAIなどのデジタル技術を保有するベンチャー企業がセンターBとして活躍しているところもあるとか。

 このような地域課題解決型「B2B2X」ビジネスモデルは、地場産業をはじめ地域の製造業や建設業、病院、学校などでの実現が期待されている。

「B2B2X」ビジネスモデル:"センターB"のDX戦略

誰がセンターBに

 その半面で「誰がセンターBになるか」が一番の問題にもなっている。ちなみに、通信事業者や商社、ベンダー、SIヤー、ITベンチャー、業界団体など、候補はいるが、本格的な取り組みが始まっている事例はまだ少ない。

 そのほか地域社会のさまざまな課題を抱える地方自治体における「B2B2X」ビジネスモデルでは、自治体がパートナー企業と共にセンターBとなってローカル5Gを利用したサービス提供者になることが近道だ。このモデルではエンドユーザーである住民へサービスを提供することになる。(つづく)

〈筆者=モバイルコンピューティング推進コンソーシアム上席顧問。グローバルベンチャー協会理事。国士舘大学非常勤講師・竹井俊文氏〉