2021.09.22 【関西エレクトロニクス産業特集】ローカル5Gで復権!関西経済 近畿総合通信局 淵江淳局長に聞く
フォーラム発足、普及促進
東京五輪・パラリンピックが終わり、国民の関心は2025年の大阪・関西万博(以下、万博)へ。万博ではICTが運営や展示の中心になることは確実だ。7月1日付で就任した近畿総合通信局の淵江淳局長に、万博やローカル5Gなどの取り組みを聞いた。
-就任後約3カ月が経過します。産業や経済の面での関西の印象は。
淵江局長 第1に万博を関西経済立て直しの起爆剤にしようという盛り上がりを非常に感じる。大阪にはオープンで独創的な企業も多く、今後の発展の素地は十分ある。万博は5G、Beyond 5G、8Kなどの技術を活用したSociety5.0の実践の場になるが、わが総通局としても、ICTを武器に、落ち込んだ関西経済の発展になんとかお役に立ちたい。
-関西の企業や自治体でローカル5G(L5G)への関心が高まっています。現状は。
淵江局長 確かに企業などからの問い合わせは増えている。総通局が音頭を取り、20年7月に「近畿ローカル5G推進フォーラム」を発足させて管内での普及活動を始めた。フォーラムではセミナーなどの会合を年数回開催してきた。次回は11月に予定している。
おかげさまで最近では実際に導入する際の初期費用や維持管理費などにも関心が及び、L5Gが企業の身近な話題になってきたことは確かだ。
L5Gを活用した地域開発モデル構築のための実証実験も20年度に奈良市の平城京跡で行われ、MR(複合現実)技術を活用した遣唐使船に関する歴史体験を実現した。今後も熊野古道、姫路城など関西の歴史遺産をテーマにした観光体験をL5Gの活用で実現していきたい。
-関西におけるL5Gでは「Sub6」帯への関心も高いようです。
淵江局長 その通りでSub6帯の周波数特性を生かしたL5Gの実用化も活発で、現在、企業・自治体合計9件にSub6帯の免許を付与している。
関西には高い技術力を持った中堅や中小企業が多く、製造業が盛んだ。そのため、今後もL5Gの活用を促進して、より安全な、作業効率を高める取り組みを支援していきたい。
-関西では依然、コロナ禍にあります。テレワーク支援についてお聞かせください。
淵江局長 中小企業の皆さんを対象にテレワーク応援セミナーや相談会を実施している。コロナ禍の新しい働き方として、テレワークの導入や定着に向け継続的に支援していきたい。
-関西地方も近年、多くの自然災害に見舞われています。ICTを担当する行政として支援体制は。
プッシュ型で支援
淵江局長 災害発生時には機材を含めたプッシュ型の支援や要員の派遣などで貢献したい。実際、災害対策用に衛星携帯電話や簡易無線機をはじめ、MCA無線機などの移動通信機器や移動電源車、臨時災害放送局用設備などの搬送や貸与で支援体制を敷いている。通信手段の確保に万全を期したい。
災害時の情報網として地域のケーブルテレビ局やコミュニティーFM局との緊密な連携が必要だ。
-南海トラフ巨大地震発生の危険性がかねて指摘されています。
淵江局長 確かに将来を予見して対策を練ることが重要で、これまでに和歌山県沿岸部などの非常通信ルートについて重点的に点検を実施しており、複数の自治体による新たなルート設定や一部区間の無線化などを提案しているところだ。
奈良県吉野川以南の非常通信ルートも点検中で、非常通信ルートの改善や非常通信訓練を実施することで、迅速確実な通信体制を確立したい。