2022.01.14 【電子材料特集】各社の事業展開クラレ

池森 執行役員

「ジェネスタ」、自動車用途に期待

 クラレは、耐熱性ポリアミド樹脂「ジェネスタ」を事業化し、電気・電子分野のコネクター向けや、自動車関連(車載電装/自動車耐熱部品)を中心に実績を拡大している。

 ジェネスタ(PA9T)は、同社が世界で初めて工業化したノナンジアミンを使用したポリアミド樹脂(PA9T)。耐熱性、低吸水性、耐薬品性など優れた特長を持つ。

 特長は①優れた耐熱性(融点306度と高く高温時物性に優れる。はんだ耐熱性270度)②低吸水性。以上により表面実装時のブリスタ発生を防ぐ③優れたしゅう動性④優れた成形性など。これらの特性が評価され、年々販売規模を拡大している。

 池森洋二執行役員イソプレンカンパニー ジェネスタ事業部長は、ジェネスタ事業の動向や展望について「2021年度(12月期)の販売数量は20年比で約3割増となった。用途別では、自動車や電気・電子をはじめ、あらゆる用途で販売が増加した」とし、「22年度以降もジェネスタ販売数量は毎年1割以上の伸びが期待できる。特に期待するのは自動車用途。今後の車はEV(電気自動車)化やCASEの進展で機能デバイス搭載量が増え、車載高電圧用途では耐トラッキング性(耐電気絶縁性能)が求められるため、ジェネスタの優れた耐トラッキング性が評価されている」と話す。

 電気・電子用途では、4G/5G基地局用のDDRコネクター向けの販売が増加している。DDRコネクターのSMT化に伴い、ジェネスタの低吸水かつ高強度特性が評価されている。

 ジェネスタ事業では、世界10カ国・13拠点に販売や技術サービスの担当者を配置。国内ではCAE解析を行う「つくば研究センター」があり、顧客との協創によりよい材料の開発につなげている。

 「特にこの1年くらいで業界でのジェネスタの知名度がかなり上がってきた」(池森執行役員)。

 生産体制拡充では、初の海外製造拠点となるタイ新プラントが22年半ばから後半にかけて完工、立ち上がってくる予定。国内では鹿島(茨城県鹿島市)と西条(愛媛県西条市)の生産性向上に努める。

 原材料調達では、タイPTTGC社との合弁で、ブタジエン誘導品を安定調達できる体制を構築している。

 新製品開発では、耐熱性をPA9T(ジェネスタ)よりもさらに高めたナイロン系(PA系)樹脂の銘柄開発を進めており、顧客評価が進んでいる。