2022.01.18 世界の再エネ市場 22年展望エネ研報告、コスト面などに優位性

再エネの市場などについて説明する日本エネルギー経済研究所の二宮氏

「太陽光拡大の流れ、強まる時代」へ

 日本エネルギー経済研究所(東京都中央区)が、2022年の世界の再生可能エネルギー市場の展望などについて報告をまとめた。主要国のカーボンニュートラル宣言などにより、再エネの発電容量の増加がさらに加速するとみられ、コスト面などでの優位性から太陽光を中心に拡大する見込みだという。

 同研究所の定例研究報告会で、電力・新エネルギーユニット新エネルギーグループの二宮康司研究主幹が発表した。

 20年の世界の発電量は前年と比べて1%減少したが、21年は前年比で5%程度増加する見通し。一方、太陽光や風力などの再エネは、20年に「他の電源が軒並み発電量を減少させたのとは対照的」に、前年比で6%増加した。21年、22年も前年比で7~8%増加する見通しだ。

 発電量に占める再エネのシェアは19年に26%だったが、20年には28%、21年は29%と拡大。こうした傾向を維持して、22年には30%に近づくとみられる。中でも19年に2.7%だった太陽光は20年3.2%、21年3.7%に拡大。風力も19年5.3%、20年5.9%、21年6.8%と大きく伸ばしている。

 このペースが続けば、26年ごろには再エネのシェアは36%に達し、これまで最大だった石炭と逆転するとの見通しを示した。

 21年の再エネ発電量の増加は600TWhに達する見通し。電力需要が1000TWh超の大幅増加になったため、再エネ増加分だけでは足りず、残りの多くを石炭火力の増加でカバーした格好になったという。

 二宮氏は「再エネ増加が所与のようにあり、電力需要の増減に対して、再エネ以外、特に石炭火力が調整弁となる構造になっている」と説明。二宮氏は「カーボンニュートラルの観点から石炭火力の増加を抑制するためには、再エネをはじめとする非化石電源をさらに増やすか、省エネを進めて電力需要全体を下げるかの、いずれかしかない」と語った。

 20年以降、再エネ発電容量の増加が一段と加速しているため、22年末には3500GW(うち水力1350GW)近くに達すると予測されている。05~10年に年率平均で6%だった増加率が11~19年には8%に高まった。20~22年には9%が見込まれ、より増加が加速するとみられる。

 20年は、世界的な新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けたものの、世界の再エネ発電の導入量が、過去最大の19年(180GW)を大幅に上回って260GWに達した「記録的な年」。21年、22年も、20年を上回る水準で導入が進むと見込まれる。

 背景として、主要な国々がカーボンニュートラル宣言をして再エネ導入計画や促進政策を進めている点や民間企業の再エネ電気の調達拡大などを挙げ、「市場環境が、再エネ発電への投資意欲を高めている」と指摘。「ギアが一段上がった水準で導入が進む」(二宮氏)との観測だ。

 中でも太陽光の伸長が大きく後押しする。これまでの再エネ市場は、00年代の初頭は水力、10年代前半は風力、16年以降は太陽光が中心となる構造に徐々に変化してきたという。

 だが、太陽光の発電コストの低下や、日照さえあれば発電できる汎用(はんよう)さ、設置維持の簡便性などから太陽光の優位性が高まっており、20年以降は一段と太陽光拡大の流れが強まる。二宮氏は「これからは太陽光が一強の時代に入る」と強調した。21年、22年と再エネ発電容量の年間増加量の6割を太陽光が占めるまでになると予測されるという。

 一方、注目を集めているのが中国だ。世界の再エネ発電容量の年間増加量に占める中国のシェアは20年に初めて50%を超えたという。中国は「60年カーボンニュートラル」を掲げて再エネ導入を一段と加速させており、21年、22年も増加量の約半分を中国が占めるとみられる。

 再エネの需要と供給の両方が中国一国に大きく依存することが今後も続くことに対し、二宮氏は「中長期的観点から、エネルギー安全保障上、問題視する見方が今後、広がる可能性がある」と述べた。

注目される政策の行方

 再エネ拡大の進度を左右するのが、各国の温暖化政策の行方だ。21年には国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)が開催され、トルコやロシア、インドなどがカーボンニュートラル目標などを発表。主要20カ国・地域(G20)全てが脱炭素を表明したことになった。

 環境ユニット気候変動グループマネージャーの田上貴彦研究主幹が注目する一つが、米バイデン政権の施策。30年までの排出量削減目標を実現するために、5550億ドルの気候変動対策を盛り込んだ法案の行方が鍵を握る。

 さらに21年の大きな動きとして、田上氏は「ロシアと東南アジア諸国が気候変動対策に取り組んできた」点を挙げた。インドネシアでは4月に炭素税が施行される予定で、カーボンプライシングが世界的にも、どう検討されていくかがポイントになるとみている。

 今年、国内で同様に注目されるのは、国が実証開始を目指す「カーボンニュートラル・トップリーグ(仮称)」がどう具体化されるかだ。市場を通じた排出量取引を行うもので、50年の排出量実質ゼロと整合的な30年目標や計画などを策定した先駆的な企業が自主的に参加する。

 さらに、21年末から経産省の審議会で議論が始まったクリーンエネルギー戦略にも言及。脱炭素を産業の成長に結び付けるための戦略で、産業界などからの意見聴取も行い、6月ごろの取りまとめを目指す。田上氏は「ファイナンスやイノベーションについて、グリーントランスフォーメーション(GX)として、まとめた議論がされる。注視していかなくてはならないポイントだ」と指摘した。