2023.01.05 【2023年注目の先端技術特集】東大、理研、東北大の研究グループ 鉄シリコン化合物で室温下の電流誘起磁化反転を実現
【図2】BaF2を接合したFeSiにおける室温(300K)での電流誘起磁化反転(a、b) 電流誘起磁化反転の模式図(a)と実験結果(b) FeSiのように強いスピン軌道相互作用が存在する表面では、電流印加によって特定の方向のスピンが蓄積され、角運動量の受け渡しによって磁化の向きが反転する現象が起きる。本研究ではホール効果によって磁化の向きを検出した。(b)に示すように電流パルスの大きさを正の方向に増加させていくと外部磁場下ではしきい値でホール抵抗率の値(磁化の向き)が正(垂直上向き)から負(垂直下向き)に変化する様子が観測された。電流の向きを反対(負)にすると、ホール抵抗率の値(磁化の向き)が負(下向き)から正(上向き)に変化する。これは電気的に磁石の向きを制御できる磁気メモリーとしての機能を果たしている。また磁場を印加しなくても電流による磁化反転現象を実現できている。(c)室温で電流誘起磁化反転が実現されている各物質における磁化反転のしきい電流値の比較表 しきい電流値を公平に比較するために、デバイス幅で割った電流の値を比較している。本研究のFeSiは膜厚を薄くすることで理想的には表面状態のみに電流を流すことができ、その場合のしきい電流値はほかの材料と比較して非常に小さい値となり、省電力な磁気メモリーの材料として期待される。