2025.07.01 【半導体政策】〈上〉
「(半導体政策に)政治生命を賭けるつもり」と語る自民党・山際議員
「政策やり切る覚悟示す」
自民党・山際大志郎衆院議員
「オンスケジュールで進んでいる。奇跡的なことだ」-自民党半導体戦略推進議員連盟会長の山際大志郎衆院議員は、最先端半導体の国産化を目指すラピダス(工場・北海道千歳市)設立など、半導体政策の進捗(しんちょく)に手応えを感じている。
回路線幅2ナノメートルの半導体量産を目指すラピダス。設備納入を終え、今夏に最初の試作チップを完成させる。政府は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)を通じ研究委託費として1.7兆円以上を支援している。
情報処理促進法の改正も行い、情報処理推進機構(IPA)を通じて政府がラピダスに現物出資を含めて投資できる。2025年度予算にはラピダスへの出資を想定し1000億円を計上。金融機関からの融資にも債務保証を行い、民間出資のリスク軽減も図る。これらは政府が昨年発表した半導体・AI(人工知能)分野に7年で10兆円以上の公的資金を投じる枠組みの一部だ。山際氏は「半導体戦略を最後までやり切る覚悟があることを、予算によって示した」と胸を張る。
ラピダスへの民間出資は、トヨタ自動車やNTTなど8社からの計73億円にとどまる。政府は1000億円規模の追加を呼び掛けるが、正式な出資表明はまだ。
山際氏は「ラピダスが本当に最先端半導体を作れるのか、確かめてもらっている段階だ」とし、「パイロットラインや試作品の完成など、一つ一つのマイルストーンをクリアしていくことが大切だ」と強調している。
「地域住民の利益も大事」
公明党・河野義博参院議員

公明党半導体基盤強化プロジェクトチーム(半導体PT)の座長を務める河野義博参院議員は、半導体受託生産大手TSMCが進出した熊本県菊陽町への視察などから「わが町にTSMCが来てよかったと思われない限り、産業界の支持だけでは不十分」とし第2、第3工場の計画も念頭に「住民に理解を深めてもらうことが大切だ」と強調する。
河野氏は総合商社の新技術・再生可能エネルギー部門で風力発電事業に携わった経験を持つ。党の総合エネルギー対策本部では事務局長を務め、半導体や電力が大量に必要な人工知能(AI)の政策などに取り組んだ。
半導体PTでは生産受託だけでなく、部素材から製造装置、設計開発、後工程について学んだ。企業のオープンイノベーションや高専生など半導体関連の人材育成についても意見を交わし、関連企業への視察を重ねた。
ただ河野氏は、TSMCが進出した菊陽町では交通渋滞や住宅・保育所の不足、工場の大量の水使用に地元住民から懸念の声を聞いたと語り、「住民にとって利益があったとの実感はまだ薄い」と感じている。
河野氏は今後の半導体政策について、産業育成の観点からも「旗を振り続けることが重要」とする。その上で「政治の立場から働き掛けを続けることが、政策の継続性に欠かせない」と考えている。
政府や民間が進める国内の半導体政策について、各党担当者へのインタビューを2回にわたって紹介する。