2025.06.20 日本半導体の復興へ 「政策をやり切る覚悟」 自民半導体議連の山際会長に聞く
山際氏は「(『民』に対し)『官』としての姿勢を示し続けることが重要」と話す
政府は、最先端半導体の量産化を目指すラピダスの支援に向け、今年度予算で1000億円を出資する計画だ。それを可能にする改正法も5月に公布された。日本の半導体産業は再び輝きを取り戻すことができるか。自民党半導体戦略推進議員連盟の会長を務める山際大志郎衆院議員に、今後の半導体政策について聞いた。
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「オンスケジュールで進んでいる。これは奇跡的なことだ」。山際氏は半導体政策について、こう評価する。
ラピダスが製造を目指すのは、世界で量産化した例がない回路線幅が2ナノメートル(ナノは10億分の1)相当の半導体。すでに北海道千歳市で製造拠点「IIM-1(イームワン)」の建設を進め、4月には試作のために必要な全ての製造設備の納入が完了した。今夏に、最初の試作品を完成させる計画だ。
一連の動きは政府が方針を立て、資金面で大部分を負担。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)を通じた研究委託費として、1.7兆円以上支援している。
量産化へ巨額投資
今年からは政府による出資という形で支援するため、情報処理促進法の改正も実施。情報処理推進機構(IPA)を通じて政府からラピダスに現物出資を含めた投資を行うことができるようになった。25年度予算には、今回の法改正を活用したラピダスへの出資を想定し、1000億円を計上。関連する法改正と合わせ、金融機関からの融資に対する債務保証も実施し、民間出資のリスク軽減も狙う。
今回の動きは、政府が昨年発表した半導体・AI(人工知能)分野に7年で10兆円以上の公的資金を投じるという枠組みの一部。法改正の意義について山際氏は「われわれが半導体戦略を最後までやり切る覚悟があることを、予算によって示した」と語る。
民間出資の現状と展望
ラピダスへの出資は、トヨタ自動車やNTT、キオクシアホールディングスなど8社からの計73億円にとどまり、政府支援に比べ小さい。政府は新たに1000億円規模の追加出資を呼び掛けているが、民間による正式な出資表明はまだだ。
山際氏は「当然のこと」とした上で、「今はラピダスが本当に最先端の半導体を作れるのか、確かめてもらっている段階」と話す。「だからこそ、パイロットラインや試作品の完成など、一つ一つのマイルストーンをクリアして行くことが大切だ」と強調する。
「政治生命を賭けるつもり」と語る山際氏。続けて「中途半端では勝てない、きついレースになる」と気を引き締めた。官民一体で半導体産業復興の歩みを着実に進めるためには、政府が指導力を発揮する必要がある。山際氏は「(民間に任せるのではなく)我々はしつこくコミットし続けなければならない」と力を込めた。
<執筆・構成=半導体ナビ>