2023.01.05 「CES2023」米ラスベガスできょう開幕 モビリティーやヘルスケアなどに注目
CTAの発表の様子。多くのプレスが詰めかけた
【ラスベガス(米ネバダ州)=CES取材班】世界最大規模のテクノロジーの見本市「CES 2023」が5日、当地で開幕する。3000社以上が出展。世界170以上の国・地域から例年並みの10万人以上の来場が見込まれ、うち約3分の1は海外から訪れる見込みだ。昨年も2年ぶりのリアル開催だったが、コロナ禍で会期を短縮したため、例年同様の体制で開催されるのは3年ぶりになる。会期は8日まで。
開幕に先立ち、主催者の全米民生技術協会(CTA)が今年のトレンドなどを発表。メタバースでモノがつながる「メタバース・オブ・シングス(MoT)」を提起した。
CTAのスティーブ・コーニング氏が登壇し、テック関連産業を取り巻く環境として、サプライチェーンの問題や半導体の供給、労働力不足、利上げやインフレを指摘。イノベーションで課題を克服する必要性を強調した。今年のトレンドにはモビリティーやヘルスケア、通信、ゲーミング、ESG、メタバースなどを例示した。
講演で、モビリティーのトレンドについて、特に電動化やスマート化、車室空間向けのソリューションなどを挙げた。また、ゲーミングでは、ハードやディスプレーに加え、ハプティクス(触覚)など没入感をさらに高める技術のトレンドを語った。
世界的に課題となっているサイバーセキュリティーについても、ゼロトラストはじめ最新のソリューションへの注目を呼び掛けた。
見どころ
会場や周辺では出展関係者らがプレス向けの事前公開などを含めて準備を進め、次第に熱気が高まっている。寒波の襲来で交通網の混乱が心配されたことから、航空便の欠航に備えて陸路で会場入りする関係者の姿も見られた。
近年のトレンドであるモビリティー関連では、各社が最新モデルや自動運転関連のソリューションなどを披露するほか、ソニー・ホンダモビリティの初参加にも注目が集まる。電動化や物流、空飛ぶクルマ関連の技術も紹介される。
スマートホームやスマートシティー関連では、新しい規格「Matter(マター)」への取り組みが注目点の一つだ。内外の家電関連各社が対応製品をアピールする。
デジタルヘルスでは、ウエアラブル端末や遠隔診療関連の展示が多彩に繰り広げられる。コロナ禍で健康志向が強まるとともに、リモートのニーズも高まった。日本からも関連の訴求がある。「SFの世界が現実になりつつある」(コーニング氏)。
メタバースやWeb3.0関連も目玉の一つ。没入感を高めるためのデバイス技術や、エンターテインメント、ビジネスに導入するさまざまなソリューションの提案が見込まれる。「私たちが考えているよりもメタバースが近づいている」(同氏)ことを体感できる機会になりそうだ。
カーボンニュートラル、グリーン化関連も通奏低音のテーマの一つとなっている。パナソニックなど各社が要素技術やコンセプト、省資源の電池ソリューションなどを披露。ロシアのウクライナ侵攻を契機とするエネルギー危機の中、再生可能エネルギーや省エネに対する熱い視線が、特に米欧で集まっている。
今回のテーマの一つに「人間の安全保障」が掲げられたのも、そうした文脈でのことだ。
日本からはエレクトロニクス関連の主要各社が参加するほか、日本貿易振興機構(JETRO)主宰のスタートアップのコーナーが展開される。3日午後(日本時間4日)からプレス向けなどの催しが相次いで開かれており、これらスタートアップが連続してプレゼンを実施。技術の詳細や米国市場での展開など熱心な質問が飛び交っている。
出展者が見どころを紹介する恒例の「Unveiled」もあり、キヤノンの米国法人や電通などが訴求した。200社前後が参加し、各国のプレス関係者らに製品やソリューションをアピール。毎回訪れているというポーランドの記者は「毎回トレンドが参考になる。欧州、特に旧東欧ではウクライナ情勢もあって地政学リスクへの関心も高い。製品とともに、そうした世界的な情勢がCESにどう影響するか、ウオッチしたい」と話した。