2023.01.12 【計測器総合特集】計測評価ソリューション 蓄電池に不可欠

 昨年末、経済安全保障推進法に基づく「特定重要物資」に半導体とともに指定された蓄電池(二次電池)。カーボンニュートラル達成には、低コストで効率的な蓄電池の実現が不可欠だ。EV(電気自動車)用バッテリー、工場や施設に配置され、再生可能エネルギーで発電した電力を蓄える大型定置用電源や家庭用蓄電池、パソコン(PC)やスマートフォン向けの小型蓄電池のほか、通信基地局やデータセンターのバックアップ電源としても活用され、蓄電池は、まさに「デジタル社会・脱炭素社会の重要物資」となっている。

材料の評価

 高効率で安全性の高い電池の流通には材料開発から、セルやモジュール、パックの製造・組み立て、完成品の性能検査までの各工程で計測評価が必要になる。

 エネルギー密度が高く、小型化や高出力化に対応できるリチウムイオン電池(LIB)はスマホやノートPC、ワイヤレスイヤホンなどに幅広く普及。EVの駆動用電池としての期待も大きい。

 LIBは正極材、負極材、電解液、セパレーターから主に構成され、電池性能を十分に引き出すには各素材の評価が重要。ニッケル、マンガン、コバルトなどの正極材料には、走査電子顕微鏡などの分析装置を使って粒子断面の観察や元素分析を実施する。

 電池を繰り返し使用することで、材料には化学変化(劣化)が生じる。劣化のメカニズムを把握するには元素分布の評価が重要となる。材料の組成比や結晶構造の変化まで、各種分析装置を用いて測定評価することが求められる。

製造・組み立て

 蓄電池の製造工程では、電池材料を結着剤や導電材などと練り混ぜてスラリー(合成塗料)を作製。スラリーは基材となるアルミや銅の金属箔(はく)に塗布してシート状の電極にする。スラリー内の各物質が均一に分散した状態にあるかは電池性能に密接に関係。インピーダンス測定による解析や、スラリーの塗膜厚の測定などで電極シートの品質を検査する。

 LIBの基幹部材「セル」の組み立て工程では、電極シートの間がセパレーターで適切に絶縁されているか絶縁抵抗を測定する。

 LIBは水分に弱いため、注入する電解液は水分計で水分量を測定したものを使用。絶縁状態の確認は電解液の注液後も実施する。セルの完成後は充放電特性を見たり、経年変化試験で耐熱性や耐久性を確認する。

 各プロセスで微小な金属片など異物が混入していないか検査することも電池の品質確保には必須な工程だ。

 セルは複数個を組み合わせてモジュール、パックとして構成。組み上げた後の最終評価にも抵抗測定が必要になる。

 EVにバッテリーパックを実装した後は、電力計や電流センサーを用いての電池の実負荷特性の確認や、インバーターやモーターの電力測定でエネルギー変換効率を測定するなど、プロセスの全域で計測評価ソリューションが欠かせない。