2023.02.02 【コンデンサー技術特集】日本ケミコン 高耐熱・長寿命の導電性高分子アルミ固体電解コンデンサー 「PNAシリーズ」

PNAシリーズ

1.はじめに

 日本ケミコンの主力商品であるアルミ電解コンデンサーは、電子機器の発展とともに成長してきた電子部品の一つであり、当社は一昨年、創業90周年を迎えた。アルミ電解コンデンサーの特長は他のコンデンサー種と比べて、小形・大容量・低コストを実現でき、現在では民生機器をはじめ、産業機器および車載電装機器に至るまでの数多くの電子機器の回路に不可欠な電子部品となっている。

 コンデンサーは、図1に示すように誘電体とそれに対向する一対の電極と電極リードで構成される。静電容量Cは電極の表面積Sに比例し、誘電体の厚さdに反比例する。図2に一般的な巻回型のアルミ電解コンデンサーの基本構造を示す。電極はリード線が接続された陽極アルミ箔と陰極アルミ箔であり、セパレーターを介して巻回され素子を形成している。

【図1】コンデンサーの概略
【図2】巻回型アルミ電解コンデンサーの基本構造

 さらに陽極箔(はく)は表面にエッチングピットと呼ばれる微細な穴をあける処理を行うことで表面積を拡大している。誘電体は陽極箔のエッチングピット上に形成されたアルミ酸化被膜であり、アルミ電解コンデンサーの定格電圧に合わせ所定の厚みに設定される。静電容量を引き出すためには陰極箔を誘電体全体に接触させる必要があるが、エッチングピットが微細であるため現実的ではない。そのため、真の陰極としてエッチングピットに浸透可能な電解液などの陰極材料を用いることで誘電体と陰極を電気的に接続し、コンデンサーの特性を引き出している。

 アルミ電解コンデンサーの陰極材料には電解液または導電性高分子あるいはその両方が用いられている。陰極材料に電解液を用いたアルミ電解コンデンサーは、素子にイオン伝導性の液体である電解液を含浸して作製する。電解液の欠点としては電気伝導度の低さ、電気伝導度の温度依存性、高温下での蒸散が挙げられる。そのため、電解液を用いたアルミ電解コンデンサーは、内部抵抗(以下、ESR〈等価直列抵抗〉)が比較的高く、環境温度によりESRが変動し、高温環境下において電解液の蒸散が加速し短寿命となる。

 一方、陰極材料に導電性高分子を使用したアルミ電解コンデンサー(以下、導電性高分子アルミ固体電解コンデンサー)は、モノマーと酸化剤と呼ばれる溶液を素子に含浸し、加温することで化学反応を促進させエッチングピット内に導電性高分子を形成することで作製する。この際のモノマー、酸化剤、反応速度の組み合わせにより導電性高分子の電気伝導度が変化することでコンデンサーの性能に影響を与える。

 導電性高分子は電気伝導度が電解液に比べ1000倍以上高く、熱分解温度は300℃以上である(図3)。そのため、導電性高分子アルミ固体電解コンデンサーは同サイズの電解液を用いたアルミ電解コンデンサーに比べ、低ESRで温度によるESRの変動が小さく、高温化でも寿命が長い特長を持つ。

【図3】陰極材料の電気伝導度と耐熱性

 今回、独自の導電性高分子形成技術と封口技術により、125℃環境下で業界最長寿命の導電性高分子アルミ固体電解コンデンサーを開発したため報告する。

2.導電性高分子アルミ固体電解コンデンサーのESR特性と製品寿命

 図4に理想コンデンサーと実際の導電性高分子アルミ固体電解コンデンサーのインピーダンスおよびESRの周波数特性を示す。理想コンデンサーは、インピーダンス特性が直線的に減少し、ESRに周波数依存性がない。

【図4】理想コンデンサーと実際の導電性高分子アルミ固体電解コンデンサーの周波数特性の比較

 一方、実際の導電性高分子アルミ固体電解コンデンサーは、インピーダンス特性が共振点前後で鈍化し、共振点以降で上昇する(外部電極のインダクタンスの影響)。特に実際の導電性高分子アルミ固体電解コンデンサーのESR特性は、陰極材料である導電性高分子の形成状態を反映する。ESRは、tanδ(誘電体の誘電損失成分)に起因する内部抵抗R01、エッチングピット内の導電性高分子の抵抗R02、セパレーターと導電性高分子により形成された複合体とリード線などの固有抵抗R03、電極と導電性高分子の界面での抵抗R04の和となり、以下の関係式で表せる。

 導電性高分子アルミ固体電解コンデンサーは、導電性高分子の酸化劣化による電気伝導性の低下でESRが上昇し製品寿命を迎える。この時に上昇するESR成分は、上記で示したエッチングピット内の導電性高分子の抵抗R02、セパレーターと導電性高分子により形成された複合体とリード線などの固有抵抗R03、電極と導電性高分子の界面での抵抗R04である。そのため、導電性高分子アルミ固体電解コンデンサーの長寿命化には酸素にさらされても酸化劣化しにくい導電性高分子に加え、導電性高分子が酸化劣化した際に影響を受けにくいセパレーターと電極が求められる。

 また、導電性高分子アルミ固体電解コンデンサーの製品寿命には導電性高分子が酸素と触れ合わないように製品内部と外気とを隔てる封口ゴムも重要となる。一般的にゴムも空気中で酸化劣化を起こす。ゴムの酸化劣化とはゴムを形成するポリマー成分の化学結合が酸素により切断・再結合を繰り返すことでゴムが硬化・収縮していく反応であり、温度が高いほど進行しやすい。

 導電性高分子の酸化劣化はゴムの酸化劣化で製品の気密が低下することで製品内部に酸素が侵入し発生する。そのため、導電性高分子アルミ固体電解コンデンサーに使用する封口ゴムには酸化劣化による収縮が小さく、製品内部への酸素透過性が低い特性が求められる。

3.PNAシリーズの特長と製品仕様

 各国で5Gサービスが開始され通信市場は急激に成長している。5G基地局は高速・大容量の情報を扱うため、スモールセルと呼ばれる小型の通信基地を数多く設置する必要がある。スモールセルは屋外設置が主となるため、コンデンサーには広い温度範囲や高湿度など厳しい条件での動作が求められる。また、スモールセルの増加による設備管理負担を軽減するために電子部品の長寿命化の要求も強くなっている。

 「PNAシリーズ」は、新規材料の採用により高耐熱・長寿命を実現している。導電性高分子については酸化剤、反応速度の見直しにより、電気伝導度を向上させている。また、封口ゴムにおいても材料の最適化により、製品内部への酸素透過を低減したゴムの開発に成功している。

 これらにより、本アイテムは125℃12,000時間の業界最長寿命と85℃85%RH1,000時間の業界最高水準の耐湿性を実現しており、通信基地の耐候性向上、メンテナンスフリーへの貢献が期待される。

【製品概要】
・カテゴリー温度範囲:-55~+125℃
・定格電圧範囲   :2.5~16V
・静電容量範囲   :100~560μF(静電容量許容差±20%)
・製品サイズ    :φ6.3×6.7Lmm
・耐久性      :125℃12,000時間保証
・耐湿性      :85℃85%RH1,000時間DC負荷保証

【標準品一覧表】

【サンプル対応・量産対応時期】
サンプル:現在対応可能
量産  :2023年6月

4.今後の展開

 現在の通信市場の動向として通信基地の小型化も挙げられる。電子部品はより高密度にパッケージされる傾向にあり、それに伴い電子部品の動作環境はより高温化している。そのため、コンデンサーへの高耐熱・長寿命の要求はより一層強まってきている。当社では今後も引き続き、125℃での製品寿命の延長や更なる高耐熱品の開発に取り組んでいく。
 〈日本ケミコン(株)技術本部第二製品開発部 導電性グループ 船越伊久哉〉