2023.08.05 電子部品メーカー大手8の第1四半期(4~6月)決算、7社が営業減益か営業赤字転落 ICT関連や産機関連を中心に調整局面が続く
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電子部品企業の業績が厳しい局面を迎えている。8月4日までに出そろった電子部品メーカー主要8社(ニデック、TDK、京セラ、村田製作所、ミネベアミツミ、アルプスアルパイン、日東電工、ローム)の23年度(24年3月期)連結第1四半期(4~6月)決算は、7社が営業減益または営業赤字を計上した。為替の円安は業績にプラスとなったが、ICT関連需要の低迷、産機市場での在庫調整などにより、部品需要が落ち込んだ。
電子部品大手の業績は、21年度から22年度前半にかけて好調に推移したが、22年秋口以降、市況が悪化。23年の年明け以降は一層、低調さが鮮明となり、22年度4Q(4~6月)に続き、23年度1Qも底這い状況が続いた。
分野別では、車載は比較的堅調に推移しているが、ノートPCやタブレット端末、中華系スマートフォンなどの低迷が続いているほか、産業機器・設備投資関連の部品需要も、顧客在庫調整等により、1Qは厳しい受注環境が続いた。データセンター関連などの需要も、投資抑制により低調に推移している。
収益面では、為替の対ドルでの円安が追い風となったが、原材料価格やエネルギーコストの高止まり、グローバル人件費の上昇、インフラコスト上昇などもコスト増の要因となっている。
8社の中で唯一、1Q業績が増収増益となったニデックは、重点を置く車載や家電・商業・産業用が堅調に推移し、営業利益、税引前利益、純利益がそれぞれ四半期ベースで過去最高を更新した。EVトラクションモーター事業の収益性改善などが利益を押し上げた。
村田製作所は、1Qはコンデンサーがコンピューターや基地局向けを中心に幅広い用途で減少したほか、コネクティビティモジュールや高周波モジュールがスマホ向けで減少し、2桁の減収減益。
京セラも、1Qは円安による増収効果はあったが、22年度4Qから続く主要市場の半導体関連や情報通信市場の調整により、減収減益となった。
TDKは、1QはICT市場向け受動部品やHDD用ヘッドなどの売り上げが大幅に減少し、車載市場向けも顧客在庫調整などにより想定を下回った。同社はHDD関連市場の急激な変化への対応策として、構造改革費用35億円の計上を発表した。
2Q(7~9月)の部品市況も、全般的には厳しさが続く見込み。車載用は、半導体不足の解消により、欧米や日本を中心に自動車生産台数の回復傾向が続く見通しだが、産機関連は、「当初の想定よりも、回復時期が後ズレする」とみている企業が多くスマホ向けは、「中国スマホメーカーの在庫調整はほぼ完了したとみているが、本格的な回復には時間を要する」とする企業が多い。米アップルや韓国サムスン電子のハイエンドスマホ向けの受注は比較的堅調だが、「今年4月時点の想定と比較すると、若干弱含み」とされる。
それでも、部品の在庫調整が順調に進むことで、下期に向けては市場が正常化し、徐々に回復に向かうことが期待されている。各社は市場動向や顧客動向を注意深くウオッチしながら、今後も積極的な事業を展開する。
(7日の電波新聞/電波新聞デジタルで詳報します)