2024.01.01 【AV総合特集】’24展望 オーディオ
高級オーディオの試聴イベントは今年も活況になるはずだ
イベント再開で需要拡大 ストリーミング音源の高音質化ニーズが進む
オーディオは今年も堅調な需要が期待できる市場だ。コロナ禍の巣ごもり需要で、おうち時間を充実するトレンドに乗り、オーディオは需要が拡大した。アフターコロナへと本格的に突入した昨年5月以降は、リアルな試聴イベントが各地で復活したことで、需要が下支えされた。今年も体験を軸とした提案で、さらなる盛り上がりに期待がかかる。
「コロナ禍の巣ごもり需要によって、おうち時間を充実させようとする機運が高まり、オーディオ機器の需要にも好影響を与えた。その傾向は昨年も続き、販売は国内外で順調に伸びている」。そう話すのは、ラックスマンの末吉達哉代表取締役社長だ。
オーディオ市場は、シニア層を中心とする愛好家が支えている。巣ごもり需要でその裾野は広がったが、昨年5月に新型コロナが「5類」へと移行した後も、おうち時間を充実させる機運は続いているという。
それを支えているのが、リアルな試聴イベントの再開だ。東京・有楽町で開催された「東京インターナショナルオーディオショウ」をはじめ、昨年は制限を取り払った形で開催するオーディオ関連のイベントが目立った。オーディオ評論家によるセミナーは満席で、入りきれない来場者であふれるほどのにぎわいを見せた。
アキュフェーズの鈴木雅臣代表取締役社長も「ハイエンド・オーディオ機器の販売促進は、お客さまに製品を見て、触って、聴いていただかなければならないため、対面対応が基本。コロナ禍が明けて、やっとこれが実践できるようになった」と語る。同社は昨年、プリアンプなどの新製品5機種を発売し、いずれも初回生産分が完売するなど好調なスタートを切っている。
アンプやスピーカーなどのオーディオ機器を一から組み上げるピュア・オーディオは、価格も高額になることから、シニア層を中心とする愛好家が需要を支えている。コロナ禍で多少の広がりを見せたとはいえ、市場の成長にドライブをかけるほどではない。市場を成長曲線に載せるには、若年層への浸透が欠かせない。
■ワイヤレスイヤホンをフックに
ただ、市場全体を俯瞰してみると、ピュア・オーディオに代表される高級オーディオばかりでなく、ワイヤレスイヤホンのように老若男女に利用が広がる製品も登場している。テレワークの普及もあり、スマートフォンに保存したり、ストリーミング配信されたりした音楽を聴くためだけでなく、仕事でもイヤホンを使うシーンが大幅に増えた。特に無線で使えるワイヤレスイヤホンは使い勝手が良く、リーズナブルなものから音質を追求した高額なものまで、ニーズに合わせて幅広い製品群から選べるようになっている。
ワイヤレスイヤホンは、若年層でも気軽に触れられるオーディオ機器。ここをフックにオーディオ機器により関心を持ってもらう活動も、オーディオメーカーには求められるところだ。
ワイヤレスイヤホンには、スマホの存在が欠かせないといえるだろう。ブルートゥースでスマホと接続して音楽を楽しむ。ワイヤレスイヤホンを持つ多くの人が気軽に実践しているはずだ。より音質にこだわる人はヘッドホンで楽しんでいる。
家庭内におけるWi-Fi環境の整備が当たり前となった現在、高級オーディオもこうした状況への対応が進み始めている。ストリーミング音源を高音質化するネットワークトランスポートを、ラックスマンが同社として初めて昨年7月に売り出すなど市場が動きだしている。末吉代表取締役社長は「音楽を聴くスタイルは様変わりしつつあり、ストリーミング音源を高音質化するニーズがこれからはもっと高まる」と展望する。
英国スピーカーメーカー・KEFも、ブルートゥース接続で音楽を聴ける高級スピーカー「LS60 Wireless」の販売を日本で強化している。KEFは「原音再生」を掲げ、東京・青山に昨年12月に直営店をオープンするなど、同社製スピーカーを試聴体験できる場の提供にも乗り出している。
■拡大続くスピーカーサウンドシステム
電子情報技術産業協会(JEITA)のスピーカーサウンドシステムの需要予測によると、24年以降も毎年、市場は順調に拡大していく見込みだ。中でもスマートスピーカーは、今後、家庭内でより重要な位置付けになってくるはずだ。
アマゾンやグーグルに代表されるスマートスピーカーは、音楽を気軽に聴くオーディオ機器という役割だけでなく、スマートホームを構成する一要素としても注目を集める。ディスプレー付きの製品も増えており、高音質化も進んでいる。
ハイレゾ音源による音楽のストリーミング配信への期待感が、オーディオ市場では高まっている。ストリーミングを楽しむ入り口としてもスマートスピーカーの存在は無視できない。
デジタルネーティブな若年層への浸透には、スマートスピーカーのような代表的なIoT機器との親和性も、これからのオーディオ機器には求められてくる可能性もある。