2024.01.03 【暮らし&ホームソリューション特集】’24各社の戦略 三菱電機 尋木保行上席執行役員リビング・デジタルメディア事業本部長

尋木 上席執行役員

家電のIoT標準化が必要
循環型ビジネス拡大へ

 2023年度上期は、昨年と比較して安定的な生産供給ができたことで、業績は堅調に推移した。8、9月にかけて東京、大阪、名古屋で「暮らしと設備の総合展」を4年ぶりにリアル開催し、製品やソリューションの強みをPRするとともに、お客さまとの関係を強化することもできた。

 こうした中、今まで以上にお客さまの用途を意識し、「パーソナライズ化」や「使う楽しさやワクワク感の提供」「家族構成や嗜好(しこう)などライフサイクルを通じた変化への対応」など、製品単体ではできない、より多くのお客さまに満足いただけるソリューションを提供していく。

 昨年6月には、IoT対応したIHクッキングヒーター「レンジグリルIH」を発売した。エアコンや冷蔵庫、給湯機などの一部機種でもIoTに対応しており、機器の利便性向上に取り組んでいる。複数のIoT家電を活用したソリューションとして、昨年2月から高齢者見守りサービス「MeAMOR」も展開している。

 家電のIoT化の魅力を実感してもらうには、さまざまな業種のアイデアが集結・実現できる標準化を推進することが重要だ。当社のIoT基盤「Linova」は、独自性を出す部分と標準化する部分とを同一の統合IoT基盤上で実現できる。例えば、同じスマートフォンアプリで、他社のECHONET Lite機器も自社製品と同じ操作性で対応することが可能だ。当社製品を通じて社会課題解決に貢献するとともに、個々の企業を超えたオープンな議論を活性化し、お客さまに満足いただけるソリューションを引き続き検討していく。

 空調冷熱事業では、欧米やインドで急増する需要に対応すべく、地産地消の体制を強化。脱炭素社会に貢献するための省エネ技術や環境対応技術(省冷媒・新冷媒)開発の推進や、地産地消を支えるグローバルR&Dセンターの強化を進める。

 欧州では、昨年3月にトルコ工場でATW(ヒートポンプ式温水暖房機)の生産を開始した。インドでは、エアコンと空調機器用圧縮機の生産を開始することで、今後の需要増加に対応する。インド工場の稼働は25年10月の予定で、エアコンは年間30万台(室外機ベース)生産し、12月からは空調機器用圧縮機を年間65万台生産する予定だ。

 今年は、世界的な脱炭素化の動きの中で、顧客ニーズの多様化や、欧米を中心とした金利上昇、物流問題など変化の激しい市場環境への対応が必要になる。当社が持つ省エネ技術などの強みを発揮できるチャンスだと思っている。

 そのためにも、機器単体のビジネスと合わせ、循環型ビジネスであるストック型・運用管理型などの事業の構築も進める。ビル事業とも連携しながら、各機器を通じたデータの利活用や機器同士を連携したサービスの構築などを一層加速する。循環型デジタル・エンジニアリング企業として、得た情報を基に新たな価値を創出し、お客さまに還元していく。