2024.01.15 【電子材料特集】5G通信用材料動向

5G用熱硬化性低誘電樹脂

低誘電率など兼ね備えた素材開発

 電子材料メーカー各社は「5G/Beyond 5G」に照準を合わせた新製品開発、市場投入を加速させている。5G/Beyond 5G用電子部品・デバイスで求められる低誘電率や低誘電正接、半導体実装に耐えられる耐熱性などを満たす材料開発を強化することで、5G関連市場(インフラ/端末)でのビジネス拡大を目指す。

 5G通信は、超高度情報社会に向けた次世代通信方式として、超高速大容量、低遅延、多数同時接続などを特徴とし、2020年代に入り、世界各極で本格的な普及が進みつつある。

 5G通信の周波数は、ハイバンドでは30ギガヘルツ近傍以上のミリ波帯域が使用される。このため、最近は5Gのミリ波領域に照準を合わせ、高周波対応や高速大容量伝送に対応するための電子部品・デバイス開発へのニーズが増している。5Gは同時多接続や低遅延といった特徴を持つため、IoTの普及促進への寄与も期待されている。

 こうしたニーズに対応するため、化学材料メーカー各社は、5Gの基地局や端末などに照準を合わせた新製品開発や既存素材の新グレード品開発などに全力を挙げている。各社は、5G通信で使用される電子部品やデバイスで求められる低誘電率や低誘電正接、優れた耐熱性などを兼ね備えた素材の先行開発を進めることで、5G関連材料ビジネスの積極的な拡大を目指している。

 5Gアプリケーション向け材料開発では、低誘電率や低誘電正接を実現し、機械物性や耐熱性にも優れる高周波プリント基板用絶縁材料や5Gアンテナ基板材料、高速伝送用電子部品向け材料などの開発が進展している。各社は、精緻な分子設計などを行うことで、優れた低伝送損失を実現できる素材開発を追求し、大容量通信の安定化への貢献を目指している。

 加工のしやすさや接着性、電子部品・モジュールの小型化への寄与なども追求されている。

 ミリ波対応スマートフォンの市場も、現状では市販しているメーカーが一部に限られている。特に日本では市場が広がっておらず、米アップルのiPhone最新機種でも、日本向け端末はミリ波をサポートしていないが、今後はミリ波対応基地局の整備とともに、徐々にミリ波の活用が進んでいくことが期待されている。

 さらに、30年頃の実用化が予想されている6G(第6世代移動通信システム)向けの次世代低誘電マテリアルの研究開発も始まっている。