2025.01.10 【放送総合特集】25年 年頭所感 放送サービス高度化推進協会 加増良弘理事長

加増 理事長

4K8K衛星放送の普及推進

LCBプロジェクト支援

 かつてに比べテレビを取り巻く状況は大きく激変している今日かと思います。厳しいコロナ禍の時期を経て、テレワークやオンライン会議の普及など働き方が大きく変わるとともに、家庭でのインターネット環境も大きく変化しました。そこに動画配信サービスの浸透やテレビ受像機の高機能化なども相まって、放送を取り巻く環境の変化に拍車がかかっています。コンテンツの流通経路の多様化によって、テレビ放送も伝送路の一つという位置づけになり、テレビ画面においては多くのコンテンツが共存していく時代を迎えたといってよいかもしれません。

 しかしながら、今なおテレビ放送は、日本に暮らす人々にとって重要な信頼できる情報源として欠かせないものであり、これから先も放送が人々にとって情報と文化の側面から価値のあるものであり続けると考えており、その一助となるべくさらなる放送サービスの高度化のために、当協会も時代の変化を踏まえつつさまざまな課題に取り組んでまいります。

 昨年12月1日、4K8K衛星放送が始まって6年が経過しましたが、多様化するメディアの中でまだまだその存在価値や魅力を十分に示すことができていないのではないかとの指摘があります。しかしながら当協会の集計では昨年9月には4K8K衛星放送の視聴可能機器台数が出荷ベースで2000万台を超えるなど、視聴者の皆さまにおける受信環境は確実に普及し続けており、一方で今年はBS右旋帯域再編により4K放送事業者3社が新しいチャンネルの開設を予定しているほか、BSデジタル放送が始まって25年を迎えるなど話題も豊富であり、一層の注目を浴びる年になると考えています。

 昨年10月に、4K8Kチューナー内蔵テレビや録画機、CATVセットトップボックスの累計出荷・設置台数が2000万台を超えたことを機に記者発表を行わせていただきました際には「次の目標」として、「2028年のロサンゼルスオリンピック・パラリンピックの頃に4000万台を突破する」といういささか高めの志を語らせていただきましたが、今後も引き続きさまざまな契機をとらえ、A-PAB会員各社や関係各所と連携しながら4K8K衛星放送の普及推進に取り組んでいく所存でおります。

 また、急速に普及拡大しているコネクテッドTV(CTV)への対応として、一昨年設置したCTV検討部会においては、CTVの機能を活用して放送・通信連携による利便性を高めることでより多くの放送由来のコンテンツをより多くの視聴者の皆さまに届けられるよう、メタデータの共通化などについての検討を行ったほか、ローカル局が保有する地方由来の独自コンテンツのネットでの有効活用の方法に取り組む中で会員社の皆さまとともに構築した「ローカルコンテンツバンク(LCB)」プロジェクトの支援を行いました。昨年11月のInter BEE2024においては実機によるデモを展示し、ブースを訪れた多くの来訪者の方々に関心を持っていただく良い機会となりました。12月からはTVer・SPOOXで実際に動画配信する実証実験も行われておりますので、ぜひご覧になっていただいて、地方局の持つ独自のコンテンツ活用の一つの道筋の実現にご協力賜ればと思います。本年もより豊かな放送文化を目指します。