2025.01.16 【計測器総合特集】計測は産業のマザーツール オシロスコープ

キーサイトのオシロスコープ「InfiniiVision HD3シリーズ」

 計測業界では、計測できないものは作れない、計測は産業のマザーツールと言われる。高度な製品・サービスを生み出すためには、高精度な計測や評価が欠かせない。オシロスコープ、デジタルマルチメーターという基本的な測定器、幅広いユースケースを持つ赤外線サーモグラフィーカメラを紹介する。

基本的な波形計測器

 オシロスコープは電気で動く機器の電気信号を観測する基本的な波形計測器の一つ。時間的な経過とともに入力信号の変化をグラフ表示する。電気・電子機器で広く使われるデジタル回路の動作障害はノイズなどを原因とする場合が多い。こうした原因を探る場合にオシロスコープを使って計測する。

 デジタルオシロスコープは、アナログ信号をデジタルに変換するAD変換器を利用してディスプレーに波形を表示する。波形の解析に適し、製品の不具合の原因を探したり、ノイズに埋もれた信号を取り出したりできる。波形の保存や加工などの処理ができるため、現在では不可欠な開発ツールとなっている。家電製品の開発や電気部品生産ラインの品質確認など幅広い用途で使用されている。

 従来、オシロスコープは通信分野での利用が多かったが、近年は電源や電流の高効率化を目指す「パワーエレクトロニクス」が大きな適用分野になっている。この分野に用いる電力変換装置の計測には、高分解能・高速サンプリングのオシロスコープが求められる。

電力信号のアナログ値をデジタルデータに変換することを「サンプリング」と呼び、そのタイミングが高速なほど、速い信号を捉えられる。

 GaN(窒化ガリウム)やSiC(炭化ケイ素)などのパワー半導体の高速信号を捉えるためには、より広帯域で高速のサンプリング速度が必要となり、各社が製品投入に力を入れる。

 昨年、横河計測は周波数帯域が500メガヘルツ、350メガヘルツの高分解能オシロスコープ「DLM3000HD」シリーズを発売した。外形はコンパクトで、高分解能により次世代パワーエレクトロニクスの開発を支援する。

 キーサイトは、従来の汎用(はんよう)オシロスコープと比べて垂直分解能の精度を4倍に向上させる14ビット・アナログ・デジタル・コンバーター(ADC)搭載の汎用オシロスコープ「InfiniiVision HD3シリーズ」をリリースした。帯域幅は200メガ~1ギガヘルツ、サンプリングレートは1秒・1チャンネル当たり3.2ギガとなる。

 選定対象とオシロスコープ本体を接続して信号を取り込むプローブ(探針)も測定の精度を大きく左右するため重要になる。近年は光ケーブルを使い、ノイズの影響を排した「絶縁プローブ」がGaNなどを使った電源モジュールの開発に活用されている。