2025.03.21 電力・通信の連携でDC整備を加速 政府が官民協議会を始動

「ワット・ビット連携官民懇談会」の初会合であいさつする大串経産副大臣(中央)ら=21日、東京都千代田区

「ワット・ビット連携官民懇談会」の初会合「ワット・ビット連携官民懇談会」の初会合

 政府は、データセンター(DC)を支える電力と通信の両インフラを効果的に連携させる「ワット・ビット連携」の実現に向けて、21日に官民一体で議論する協議会を立ち上げた。膨大な計算が必要となるAI(人工知能)の利用拡大を背景にDCで消費する電力が急増する中、電力と通信の垣根を越えてDC整備を促す方策を探り、6月をめどに成果を取りまとめる予定だ。

 総務省と経済産業省が始動させたのは、慶応義塾大学の村井純教授が座長を務める「ワット・ビット連携官民懇談会」。同日に初会合を開き、ワット・ビット連携に向けた現状と課題を共有した。冒頭のあいさつで阿達雅志総務副大臣は「データセンター、電力、通信の事業者が一堂に会する場を迎えることができたことは、わが国の成長と脱炭素社会実現の両立に向けて非常に画期的な一歩だ」と強調。大串正樹経産副大臣は、次世代AIの実現に向けて大規模なDCと電力インフラを一体的に整備する海外の動きに触れ、生成AIの活用による社会的課題の解決で日本が遅れないようにする考えを示した。

 懇談会には、送配電事業を手掛ける東京電力パワーグリッド(東電PG)の岡本浩副社長やNTTの川添雄彦副社長、ソフトバンクの宮川潤一社長らも構成員として参加。電力広域的運営推進機関(OCCTO)や日本データセンター協会なども名を連ねた。

 今後は、懇談会の下に設けたワーキンググループで、専門的で実務的な議論を進める計画だ。関係事業者間でDCの立地意向や電力・通信インフラの整備計画などを共有しながら、今後の望ましいDCの整備に向けた条件や課題について整理。将来のワット・ビット連携を念頭に置きながら、DCを効果的に整備する方策を具体化することを目指す。これにより関連事業者が、DCをめぐる投資の予見性を高められるようにする。

AI時代の電力需要増に備える

 石破茂首相は2月20日に首相官邸で開かれたデジタル行財政改革会議で、AIやDCなどをつなぐ情報通信ネットワークをGX(グリーントランスフォーメーション)とDX(デジタルトランスフォーメーション)を支える「新時代のインフラ」として整える方針を表明。村上誠一郎総務相と武藤容治経産相はこれを受けて、速やかに官民による協議会を立ち上げ、DC整備を加速するよう指示していた。

 ワット・ビット連携は、GXの推進に向けて2月18日に閣議決定した「GX2040ビジョン」に盛り込まれた取り組みだ。ビジョン策定に先立ち官邸で開かれた有識者会議「GX2040リーダーズパネル」で、東電PGが提唱した。政府は、電力と通信の両インフラを効果的に連携させることでAI活用のDXを促し、「成長と脱炭素の同時実現」や「国土強靭(きょうじん)化」を図ることを狙う。

 背景には、増加傾向にある電力需要がある。OCCTOが公表した国内電力需要の見通しによると、2034年度の電力消費量が24年度比で約6%増の8524億キロワット時まで膨らむ。DCや半導体工場の新増設に伴う影響が、全体の電力需要を押し上げる主因になっているという。こうした中で日本は、国内DCの8割強が東京圏や大阪圏に集中しているという課題に直面。大規模災害の発生時にもデジタルサービスを維持できるよう、DCの立地場所を分散化する取り組みが求められていた。懇談会では、光技術を活用して高品質な通信を実現できるようにする次世代インフラ「オール光ネットワーク」でDCの立地上の制約を緩和する取り組みにも焦点を当てることにしている。