2025.06.13 「うつ病に仮想現実が有効」 デジタル療法スタートアップと高知大病院が成果
スマホアプリが担っている役割の一つは、「患者に反すうが困難の解決に役立つという考えから、反すうによるネガティブな影響に気付かせる」こと
仮想現実(VR)技術を活用したデジタル治療の開発などを手掛けるスタートアップのBiPSEE(ビプシー、東京都渋谷区)は、高知大学医学部付属病院(高知県南国市)との共同研究で、うつ病に対するVRデジタル療法の有効性を確かめた。対象患者のうつ病スコアが大きく減少したという。今年中の治験開始を目標に準備を進め、治験後は医療機器としての承認を目指す。
今回、VRデジタル療法を高知大の医師主導で行われた特定臨床研究に採用。50人のうつ病患者の協力を得て同療法の有効性を評価したところ、うつ病症状を軽減する効果を確認できた。
VRデジタル療法は物事を繰り返し考え続けてしまう「反すう症状」の軽減を足がかりとして生かし、抑うつの改善につなげるという試み。認知行動療法で用いられる「メタ認知療法」や「焦点化認知行動療法」を中心とした8週間のプログラムで構成される。
具体的には、日常で使いやすいテーマをVR空間で試し、成功体験を積み重ねることで、「注意の方向性を能動的に変える」などのスキルを習得できる。プログラムの終了後も動画とスマートフォンアプリで、スキルを日常生活で実践できるようになっている。
「反すうがどんな感情や行動がきっかけとなって起こるか」や「頻度と生活への影響はどうなっているか」を把握することも可能。反すうの頻度が高い場合、生活へマイナスの影響が大きいという相関関係がみられるという。VRで体得したスキルをより効果的に活用することで、行動や認知の変容を促す。
患者が自宅で自律的にスキルを学べる設計になっていることも特徴。治療の空白となっていた自宅が、新たな治療時間との接点となる。
世界では3億人以上がうつ病に悩んでおり、経済損失は約250兆円に達すると試算されている。うつ病治療では、薬物療法が一般的だが、最初の抗うつ薬で寛解に至るのは3人に1人で、再発率は60%を超える。また、薬剤の調整が頻繁に必要となるため、副作用のリスクも高まるため、新たな治療法が求められていた。