2025.06.17 DX時代の看護人材を育成 イーウェルが産学連携でICT教育

授業を熱心に聞く和洋女子大の学生たち=千葉県市川市

 訪問看護業務のデジタルトランスフォーメーション(DX)などを支援するeWeLL(イーウェル)が、産学連携で情報通信技術(ICT)を使いこなす人材の育成に力を入れている。2日には、和洋女子大学(千葉県市川市)の看護学生を対象に「訪問看護とICT」をテーマに公開授業を開講した。DXの波が押し寄せる看護教育の現場に迫った。 

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 「訪問看護ICT実学講義」と題する公開授業が2日、同大で開講。看護学部から約110人の学生が参加し、講義室は熱気に包まれた。 

 授業では、同社講師がオンラインで参加し、訪問看護の現状などについて説明。訪問看護に特化した電子カルテ「iBow(アイボウ)」にも触れ、デモンストレーションを交えながら同サービスの仕組みについて解説した。 

 デモを見た学生の1人は「AI(人工知能)で訪問看護の計画書を作成することで業務が効率化すれば、個別のケアに集中できる」と、感想を述べた。 

生成AIで書類作成 

 同社はアイボウの機能を順次拡充しており、昨年には生成AIを用いて訪問看護の計画書や報告書をワンクリックで自動作成する新機能を用意した。報告書の場合、月平均で23.3時間短縮する効果を確かめた。また在宅患者の個別状況を踏まえ、AIが最適なスケジュールとルートを自動生成するサービスを7月から提供する予定だ。 

 アイボウの展開を強化する背景には、訪問看護の現場が直面する課題がある。高齢化の進行を背景に訪問看護ステーションの数が右肩上がりで推移する一方、療養者宅に訪問し医療行為を行う看護師が慢性的に不足しているというわけだ。 

 こうした課題に応えるのがアイボウ。多岐にわたる訪問看護師の業務を電子化し、その情報を安全にリアルタイムで共有できるようにする。 

ケア時間の創出へ 

 そうしたサービスで看護師が在宅患者に寄り添う時間を多く捻出できれば、限られた人材で訪問看護の質を高められるようになる。アイボウはこうした点が評価され、3000超のステーションで5万人以上の看護師らが利用しているという。 

 講師を務めた経営企画室の楠見彰久氏は、「学生は授業を熱心に聞いており、ICT活用の熱意と関心の高さを強く感じた」と述べた。訪問看護のICT化を教育面からも後押しする同社の挑戦の舞台は、一段と広がりそうだ。