2025.06.20 産業データの連携促進へ デジタル庁と経団連が官民協議会

 デジタル庁と日本経済団体連合会(経団連)は20日、データの連携や利活用を促すため、「デジタルエコシステム官民協議会」を同日付で設立したと発表した。ビジネスの機会を広げる観点から、国境や業界などをまたいで産業データを共有し活用する環境づくりを促し、ユースケース(活用事例)を数多く生み出すことを目指す。

 デジタルエコシステムは、デジタル技術を中核としながら、企業や政府、消費者などの多様なステークホルダー(利害関係者)が互いに連携し価値を生み出す枠組み。今回の協議会は、データの連携や利活用の取り組みを生み出すエコシステムの形成を官民で促すことを目的に設けた。

 協議会では、好事例の共有や知見の収集、案件の掘り起こしなどに注力。さらにデータ連携に必要な環境の整備を進めるとともに、国内外の動向に関する調査や分析などにも取り組む。また、データ活用の機運を醸成するため、10月に「官民協働フォーラム」を開く予定だ。運営面では、幹事会と企画運営委員会、事務局を設置。幹事会の議長はデジタル庁統括官と経団連常務理事が務め、総務省大臣官房総括審議官や経済産業省商務情報政策局長らも幹事として名を連ねた。

ユースケースの創出狙う

 ユースケースの創出に向けては、まず社会的な要請や国際的なニーズが強い環境分野に焦点を当て、既存の取り組みをベースに最初の成功事例を生み出したい考え。企業間などで安全・安心にデータ連携を行う必要があるため、送信元のなりすましや改ざんを防ぐ「トラスト(信頼性)基盤」を構築する取り組みも焦点となりそうだ。すでに経産省の主導で「ウラノス・エコシステム」と呼ぶデータ連携の取り組みが動き出し、先行して自動車や蓄電池のサプライチェーン(供給網)で二酸化炭素(CO2)排出量のデータを算出する仕組みを構築しているという。

 データの連携や利活用は、社会の持続可能性や産業の競争力を左右する重要な要素として広く認識されつつあるが、具体的なユースケースを積み上げる取り組みは道半ば。こうした中で経団連は5月、産業データスペースの構築を通じてエコシステムを実現するよう求める「第2次提言」を発表した。

 提言では、デジタル庁が司令塔となってデジタル行財政改革会議や関係省庁と連携し、産業データスペース群の全体像を提示するよう要求。これに沿って政府統一の戦略と工程表も早急に策定し、必要な施策を迅速に実行することも求めた。加えて、産業界も政府と連携してユースケースの発掘や国際標準化などを能動的に推進し、社会実装を加速する必要性も強調。官民連携による推進体制の構築も提言していた。

 13日に閣議決定した「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2025年改訂版」や「デジタル社会の実現に向けた重点計画」でもデータの利活用に触れ、官民連携の枠組みを整える必要性などを強調。こうした提言や計画を踏まえてデジタル庁と経団連は、協議会を立ち上げることにした。