2022.01.28 【水晶デバイス特集】製品動向人工水晶新システム導入で活発化育成から高付加価値化まで

5G基地局向け超低位相雑音VCXO

 車載電装システムの高度化や、5G(第5世代移動通信規格)通信の本格化に伴い、水晶デバイスへの技術要求は一段と厳しさが増している。従来以上に小型で、高精度、高安定性とともに、さらなる品質向上も求められている。

 これらに要求に対応するため、水晶デバイスメーカー各社は、キーマテリアルである人工水晶の育成から高付加価値のプロセス技術まで、新たなシステムの導入を活発化させている。

 人工水晶は、特性のバラつきがない高品質な水晶ブランクを育成するための技術開発が活発。生産性向上のため、ウエハーサイズの大口径化も進む。さらに、5Gスマートフォン向け水晶振動子などでは、超小型化かつ高周波化対応のため、従来の機械加工に加えて、前工程での独自のフォトリソ加工技術の導入による水晶片の高精度加工なども追求されている。

 組み立て工程でも、自動化やロボット化を通じた小型・高精度化など、高度な技術要求に対応している。

 需要増大が期待される5Gスマホ用水晶デバイス開発では、小型・薄型化とともに、通信品質の向上を目的とした周波数の高精度化、低ノイズ化、高周波化に対応した技術開発が進展。

 特に、最近のハイエンドスマホでは、1充電当たりの動作時間の長寿命化のため、限られた端末スペース内でリチウムイオンバッテリーの積載量を増大させる方向にあることから、バッテリー以外での電子部品には、一層の軽薄短小化が要求されている。

 こうしたニーズに対応するため、水晶デバイスのパッケージの小型・薄型化が進み、温度センサー内蔵水晶振動子では、1612サイズで厚み0.65ミリメートル品などの量産化が進展している。

 さらに1210サイズへの小型・薄型化などの技術開発も進んでいる。

 5Gスマホ用の超小型水晶振動子は、1210サイズから1008サイズへのシフトが進む。

 21年は、5Gスマホやワイヤレスヘッドホン、スマートウオッチなどのアプリケーション向けに、1008サイズの超小型品の需要が大きく増加した。1008品の需要は、22年も引き続き市場での高い成長が見込まれている。

 TCXO(温度補償型水晶発振器)も、セラミックパッケージの薄型化、水晶チップの小型化、封止技術などにより、1612サイズが実用化され、さらに1210サイズ品も開発されている。

 5G基地局用では、5Gで多用される小型基地局装置の内部搭載用として、高密度実装に対応し、高温・多湿の外部環境変化に対しても安定した動作が可能で、良好な位相雑音特性を有するOCXO(恒温槽付き水晶発振器)などの開発が進む。

 OCXOを構成する発振器回路、温度制御回路などの全てを1チップに収めた専用ASIC開発により小型化を図るとともに、高Q原石(不純物が極めて小さい高安定用の人工水晶原石)による小型SC-cut振動子開発によって、高安定・低雑音を実現したOCXOなどが開発されている。

 車載用水晶デバイスでは、自動車のメガトレンドである「CASE」に照準を合わせた高性能で高品質の水晶デバイス開発が進展している。

 中でも、ADAS/自動運転技術の高度化は、自動車1台当たりでの水晶デバイス搭載点数増加に直結するため、これらの構成要素である車載用カメラやミリ波レーダーなどに焦点を定めた新製品開発に力が注がれている。

 車載用水晶デバイスには、高温対応や耐振動・耐衝撃などで厳しい仕様が要求される。安全走行実現のために品質面の要求は極めて厳しい。特に、エンジンルーム搭載ECUなどでは、より高度な耐熱技術や耐振性能が求められている。

 車載用水晶デバイスの小型化も進んでいる。2008年ごろの段階では車載用振動子は3225サイズ程度が最小サイズだったが、車の電子化・高機能化に伴うECUの高密度実装化などに伴い、その後は2520サイズ、2016サイズ、1612サイズへの小型化が進展している。

 自動車1台当たりで使用される水晶振動子の個数は、通常の車両では30個から40個程度。高級車では100個以上が使用されているとされる。車1台当たりの水晶デバイス搭載点数は、自動車の電子化や高機能化に伴い、今後も毎年増加していくことが確実視されている。

 数年後には車載5G適用に伴う、新たな需要創出も期待されている。