2022.06.14 【DX時代に挑む先進企業】トップに聞くNECネッツエスアイ 牛島祐之社長

インタビューに応じるNECネッツエスアイの牛島社長

新中計策定、「DX×次世代ネットワーク」の開拓加速

営業利益340億円目指す

 NECネッツエスアイは、2025年3月期までの3カ年の中期経営計画「Shift up 2024」を策定した。これを機に、デジタルトランスフォーメーション(DX)に次世代通信技術を融合した成長分野「DX×次世代ネットワーク」の開拓を加速。最終年度に、過去最高の21年3月期実績を大幅に上回る3700億円、営業利益で340億円を達成する目標を掲げた。牛島祐之社長に新中計の狙いと重点戦略などについて聞いた。

―DXに向けた投資の状況をどう見る。

 牛島氏 顧客企業による投資の形が変わってきている。これまでの投資の中心は業務の効率化やコストダウンを狙ったものだったが、イノベーションを生むための投資に変化してきている。

―こうした環境下で立ち上げた新中計では、「スパイラル型成長モデル」を追求する姿勢を強調した。

NECネッツエスアイの牛島社長

 牛島氏 今まで活用したことがない技術をいかに使いこなすかが重要となっている。既に22年3月期までの前中計で、自社でDXを実践したり顧客が抱える課題の解決策を共創したりして、さまざまな課題を解決するノウハウを蓄えてきた。そうした実績をベースとする成長モデルがスパイラル型で、「構想・提言」「実装」「運用」「価値創造・向上」というサイクルを回す中で顧客との関係を深めたい。イノベーションという視点で、顧客がさまざまな事業を変えていけるようにする。

―組織戦略も重視している。

 牛島氏 営業統括本部の下に「ビジネスプロセスイノベーション推進本部」を4月に設置し、実績のある人材を集めた。顧客から問題を引き出して解決するストーリーをつくるためには、専門的な知識も必要だ。本部に所属する人材には、外部の専門家の協力を得ながらトレーニングを積んでもらう。最終的には、営業全体をコンサルにも強い組織に変えていきたい。

―投資戦略は。

 牛島氏 3カ年の累計で300億円を投入する。このうち50億円が人材投資で、コンサル力の強化に加えて、DX人材の育成と獲得に取り組む。基本的には内部の人材の能力を高めるが、スピードアップも必要なことから人材の外部調達も考える。経営目線で改革をサポートできるコンサル人材の育成実績は180人で、3年後には400人に持っていきたい。デジタル技術を使いこなすDX人材は1800人に、(高速通信規格)5Gを中心とした次世代ネットワークに精通した人材は800人に増やす。

―そのほかの重点戦略は。

 牛島氏 工場を遠隔地から安全に制御するなど、DXで味付けされた業種別・用途別のソリューションを拡大していきたい。環境やエネルギーにとどまらず、まちづくりも視野に入れ、DXの事例を積み上げていく。

―米シリコンバレーを拠点とするベンチャーファンドへの出資を継続するとともに、国内外のスタートアップ企業への連携実績も積み上げてきた。

 牛島氏 最初からグローバルスタンダード(国際標準)で考えている事業はグローバルに持っていきやすい。北米のベンチャーと一緒にできる商材を、複数のクラウドサービスを組み合わせる「マルチクラウド」で提供するモデルを新中計の期間につくりたい。

―DXは社会実装の段階に入り、関連市場を巡る争奪戦も激しさを増している。勝負の分かれ目は。

 牛島氏 DXは前例がない世界。従来のプロセスを変えてイノベーションをつくる時代に入ったとも言える。そうした中で、さまざまなツールを組み合わせて使いこなす実践の能力を高めなければ生き残っていけない。