2023.01.03 【暮らし&ホームソリューション特集】’23展望 洗濯機
ドラム式洗濯乾燥機の高付加価値化が今年も加速
ドラム式の買い替え需要続く IoT化後押し
今年の洗濯機市場は、高機能化が進むドラム式洗濯乾燥機を中心に堅調な買い替えが続くことが見込まれる。IoT化によるサービス連携にとどまらず、デザイン性もさらに洗練されてきた。家事負担の軽減につながる基本性能の向上と合わせ、単価アップが続く中でも売れている。
「ドラム式の新製品には『らくメンテ』を搭載した。メンテナンスの手間を軽減することで、おうち時間をより大切に過ごせるようにする提案をしたい」。日立グローバルライフソリューションズ(GLS)の大隅英貴社長は、そう力を込める。
日立GLSが昨年9月に発売したドラム式には、乾燥機能を使うと毎回掃除が必要だった乾燥フィルターが搭載されていない。代わりに、大型化した糸くずフィルターにごみを集め、1カ月に1回程度掃除するだけで済むようにした。「らくメンテ」という言葉通り、毎回手間となっていた乾燥フィルターの掃除頻度を大幅に減らせるようになった。
発売時の想定価格は40万円超という高額ながら、計画を1割上回るスタートダッシュとなるなど、これまでにない付加価値に対して消費者は敏感な反応を見せる。
洗濯機では、ドラム式を中心にこれまでも高機能化が進んできた。IoT化により、液体洗剤や柔軟剤の自動再注文サービスとの連携も始まり、今では縦型を含めて広がりを見せている。IoT化の利点を生かし、発売後に新たな洗濯コースを追加するなど各家庭の家族構成や使い方に合わせた機能を取捨選択できるように進化している。
コロナ禍でおうち時間が増えたことで、家事全般でより「ラクできる」方向が重視されるようになった。洗濯機では、外干しする必要のない乾燥機能の利用頻度が増えている。洗濯物を「外干ししてからしまう」のではなく、「乾燥機から直接しまう」または「部屋干ししてからしまう」という、「しまう」までの洗濯プロセスをより簡略化しようとする動きとして、「ランドリールーム」が注目を集め始めた。
ルームクリップ(東京都渋谷区)が、部屋の実例写真を共有するSNS「RoomClip(ルームクリップ)」の投稿データを分析したところ、部屋干し投稿に使われる場所系タグとして、19年まで1位だったリビングに代わり、20年以降はランドリールームや洗面所・脱衣所・浴室が上位にきた。
時短や効率化といった点からも洗濯機の近くに干す傾向が強まっており、住宅づくりにも影響を与え始めている。当然、洗濯機でも購買の決め手として乾燥機能が存在感を高めている形だ。
ファミリー層を軸とした洗濯機も、バケツ型洗濯機や小型衣類乾燥機など、世帯構造の変化や多様化するニーズに合わせ、関連製品に広がりが出てきている。市場の主力はあくまで従来型の洗濯機であるが、コロナ禍を経てライフスタイルの多様化は加速した。
アーリーアダプターをターゲットとしたクラウドファンディングでは、従来にないとがった製品がプロジェクト終了後も市場で存在感を発揮するなど、多様化するニーズに応える流通体制も進みつつある。
小回りの利く中小企業がスピード感を持って新たな取り組みを進める傾向が強いが、IoT化が急速に進んだ今、従来型洗濯機を軸とする大手メーカーも、サービス体制やユーザーの声を直接聞く体制の整備によって、「大手らしい」提案ができるはず。今後は、デジタル技術を駆使した個別対応にどこまで踏み込めるかが、重要になってきそうだ。