2023.10.20 【あかりの日特集】照明の市場動向 コロナ禍前の水準に 新たな提案の形が進む
照明制御も関心が高まる(コイズミ照明)
国内の照明市場がコロナ禍前の水準に戻りつつある。
日本照明工業会(JLMA)の統計では、今年4~8月におけるLED照明器具の累計出荷台数は2539万4000台。前年同期比では4.5%のマイナスとなったものの、原材料費の高騰などで照明でも価格転嫁が進んでいることから、出荷金額は13.5%増の3391億2900万円となった。
特にけん引しているのがLED照明の屋外向け非住宅分野。出荷台数は14.9%、出荷金額は25.6%それぞれ伸びている。
ストックLED化
LED照明の普及により、フロー(メーカー出荷)はほぼ100%LEDとなっている。一方、LED化されていない照明もまだ多く残っており、いわゆるストック(既設照明)のLED化が業界を挙げたテーマだ。JLMAの推定によるとストックのLED化率は今年4~8月で56・9%。屋外用非住宅が最も進んでおり、66・9%と推定している。
同時に増えてきているのが、付加価値照明である「ライティング5.0」の構成比だ。同じく4~8月累計ではフローに占める割合は全体の22.5%に達している。ライティング5.0の構成比が最大なのは住宅用の29・0%になる。
ライティング5.0の普及が加速する中、照明各社も器具単体にとどまらないさまざまな製品開発や提案に乗り出している。
コイズミ照明は、位置情報と連動してあかりが自動で調光調色するシステムを開発しているほか、VR(仮想現実)ゴーグルを使い、バーチャル空間で照明環境を体感してもらう提案も行おうとしている。インターネット上に作られた仮想空間「メタバース」に注目が集まる中、照明業界にもバーチャル空間を生かした営業手法が広がろうとしている。
愛知県日進市に本社を置くビートソニックは9月下旬、常設の照明ショールームを東京都内に開設。特徴的なのは、IoT技術を生かして無人で運営していることだ。
フィラメント型LED電球などを販売する同社の照明は、ホテルやレストランなどで使われている。あかりにこだわる設計士からも支持を集めており、「実際にあかりを見たい、体感したいという声は多かったが、ショールームを設置しても常駐できるような人員は割けなかったため、無人での運営を検討してきた」(戸谷大地社長)と説明する。
無人ショールームは予約制。Web会議システムで本社と接続し、必要に応じて製品について詳しく説明できるようにしている。東京での運用状況を見て、今後は大阪など他地域での開設も検討していくという。
農業用に再参入
農業用照明への再参入を決めたのはホタルクスだ。同社は9月、赤色LED電球「HotaluX AGRI-RED」など3機種を製品化し、農業用照明市場に再び打って出た。農業用は長く製品を販売していたが、新製品は30年ぶりで、従来製品は昨年に販売も中止していた。
30年ぶりの新製品でこだわったのがエビデンスだ。イチゴ農園では、3~4月ごろからアザミウマが発生すると、通常は駆除するために農薬を散布する。しかし、主力と位置付けるREDを試験的に利用したイチゴ農園では、アザミウマの発生を農薬散布と同等レベルに抑制できる効果が得られ、農薬を使わずにイチゴを収穫末期まで取ることができた。
照明の付加価値は、IoT化や制御技術を生かしたものばかりではない。虫を寄せ付けないなど特性を生かした展開で差別化を図ることも成長の鍵を握る。これからの社会環境では、さまざまな分野で新たな価値を生み出す照明の提案が各社から出てきそうだ。