2024.05.10 【やさしい業界知識】ロボット産業
世界設置台数55万台超
電気・電子産業が28%を占める
生産現場、建設・農林水産・医療などの作業現場をはじめ、輸送・物流、飲食、介護、清掃、警備、保守・点検、探索、救助など、今やロボットはさまざまな産業分野で活躍し、社会・経済活動を支えている。
労働力不足、それに伴う人件費の高騰、熟練工の高齢化、最近の働き方改革などの世界的な背景に加え、ロボット、IoT、センサー、人工知能(AI)などの技術の進化がロボット導入を加速させている。
国際ロボット連盟(IFR)が2023年10月に発表した産業用ロボットおよびサービスロボットの世界統計「World Robotics」の概要をまとめた日本機械工業連合会の「2023年度ロボット産業・技術振興に関する調査研究報告書」によれば、産業用ロボットの世界の設置台数は21年に50万台を突破し、22年は55万台を超えた。自動車、電気・電子の両産業での設置が大幅に増加。金属・機械、プラスチック、化学製品、食品・飲料の産業でも設置が進んだ。
中でも電気・電子産業の22年のロボット設置台数は全体の28%を占め、自動車産業の25%を抑えトップになっている。コロナ禍での混乱の中で、ロボットを導入し、自動化、省人化とともに生産の維持、拡大を図る動きが加速した。柵なしで人と協働でき、導入コストを下げた協働ロボットが22年は全設置台数の9・9%5・48万台を占めて設置台数を押し上げたことも大きい。
国別では中国首位
22年の国別設置台数を見ても、中国が29.03万台でトップを占め、日本は5.04万台で2位。米国3.96万台、韓国3.17万台、ドイツ2.56万台、イタリア1.15万台、台湾0.78万台、フランス0.74万台、メキシコ0.6万台、シンガポール0.59万台と続き、電気・電子、自動車の両産業に注力する国が上位を占める。
また、世界の産業用ロボット稼働台数を390.3633万台(前年比10%増)と推定。
17年以降、年平均13%で稼働台数が増加しているとみる。稼働台数でも中国が150.15万台と約4割を占める。次いで日本41.43万台。以下、韓国37.47万台、米国36.5万台、ドイツ25.96万台、イタリア9.15万台、台湾8.87万台、フランス5.52万台、メキシコ5.2万台、スペイン4.2万台、タイ3.94万台、インド3.8万台、シンガポール3.53万台、カナダ3.53万台、英国2.65万台。南東アジアが世界の65%を占める。日本に加え、近年の中国、韓国、台湾、タイなどの伸びが理由だ。
輸送や接客にも
これまで産業用ロボットの導入主体である電気・電子、自動車に加え、今後、輸送・物流、接客、掃除、検査・保守、警備などの業務用サービスロボットの導入、設置が急速に進むと予測。22年の業務用サービスロボットの世界販売台数15.76万台が26年には57.55万台と年率38%の成長を見込んでいる。
ただ、23年はロボット導入トップの中国経済が減速。世界的にもサプライチェーンの混乱などがあり自動車、電気・電子の設備投資が抑制され、産業用ロボットの導入、設置は減速。24年も3月までは回復感が乏しい。
日本ロボット工業会の最新の統計調査結果でも23年の産業用ロボット受注額(会員ベース)は4年ぶりに前年を下回り、7237億円(前年比24.3%減)だった。経済が低迷する中国や自動車、電気・電子の設備投資の抑制が押し下げ要因だ。
4月25日発表の24年1~3月期受注額(同)も前年同期比24%減の1582億円と6・四半期連続の減少となった。24年の産業用ロボット年間受注額(非会員含む)を前年比6.0%増の9000億円と予想しているが、投資先送りや世界経済の先行き不透明感が払拭されず、先行き不透明感は強まっている。(毎週金曜日掲載)