2024.08.09 【育成のとびら】〈31〉中堅社員の壁トップ「知識・スキルの不安」の捉え方、4人に1人が「成長の機会」
中堅社員は「育成の空白地帯」と呼ばれているが、なぜ中堅社員では育成施策が空洞化してしまうのだろうか。
入社から数年たつと、組織内のルールを理解し定型業務を一通りこなせるようになることが多い。そうなると、周囲から「一人前に成長したのでサポート不要」と判断されてしまうことなどが原因の一つとして考えられる。
しかし、中堅社員とひとくくりにされたとしても、年次が上がるにつれて、後輩指導や部門横断プロジェクトへの参画など、難易度の高い業務や役割を任され、求められる知識・スキルも変化するのが実情だ。
新たな悩み現れる
傾聴力やコーチングスキル、交渉力、課題達成・解決力など、新たな知識・スキルの獲得や、ライフステージの変化に伴う仕事への向き合い方など、新たな悩みが現れるケースも少なくない。
そうした現場の実態を数多く見てきた私たちは、中堅社員の不安や悩みの実態把握や解決策の提供に力を入れている。
組織の中核でもある中堅社員の成長を的確に支援できれば組織全体の成長に大きく寄与するのではないか―。この考えの下、当社ALL DIFFERENTは社会人5~11年目以上の役職がない社員を「ミドルキャリア」と位置付け、ラーニングイノベーション総合研究所とともに、2023年9月に600人を対象に調査を行った。
調査でミドルキャリアが実際に苦労したことや不安に感じていることを聞いたところ、「自分の知識・スキルへの不安」の回答が最も高く全体で45.7%だった。
年次別に詳しくみると、回答割合が高い順に社会人7年目が76.2%、社会人11年目以上が75.2%、社会人8年目が71.1%となった(図1)。
社会人年数や業務経験の蓄積が、知識・スキルに関する不安解消に直結していない状況が読み取れる。
さらに、「知識・スキルに不安を感じたことがある」と回答した層に「不安を感じた状況についてどのように捉えたか」と質問したところ、最も多かったのは「不安に感じた」(33.9%)だった(図2)。
次いで「成長の機会と感じた」(24.1%)、「負けたくない・乗り越えたいと感じた」(20.1%)となり、ポジティブな受け止めも一定以上あった。
組織・上司の役割
現場のミドルキャリアは不安の壁を乗り越えるために成長したいという意志はあるものの、OJTや上司からのきめ細やかなサポートなどを受ける機会があまりないのが実情だ。
しかし、個人の「乗り越える力」に依存してしまうと、自ら取り組み必要な知識・スキルを獲得できる人、取り組みが後回しになる人、取り組みの方向性を誤る人など、成長に差が出てしまう。
企業が知識・スキルの獲得を支援するためには、まずミドルキャリア社員がつまずいている知識やスキルを特定した上で、OJTや研修の機会を設定することが必要だ。上司からのフォローアップはもちろんのこと、期待する役割を伝達する機会の設定やキャリア開発の支援をすることが、ミドルキャリアの成長の底上げと標準化につながるだろう。(つづく)
〈執筆構成=ALL DIFFERENT〉
【次回は8月第4週に掲載予定】