2025.08.07 「お笑い文化」の海外展開へ、吉本興業グループがAI活用の翻訳サービス開発

FANYのブース=東京ビッグサイト(東京都江東区)

動画から漫才の翻訳を行う「CHAD 2」動画から漫才の翻訳を行う「CHAD 2」

 吉本興業ホールディングスは、AI(人工知能)を駆使するサービスでエンターテインメント分野に新風を注いでいる。グループ会社でライブチケット販売やオンライン配信を手がけるFANY(東京都新宿区)が、5日から2日間開かれたグーグル・クラウド・ジャパン主催の年次イベントに、面白さを損なわずに外国語に翻訳できる「お笑い翻訳AIサービス」を展示し、注目を集めた。

 FANYが展示したイベントは、東京ビッグサイト(同江東区)で開かれた「Google Cloud Next Tokyo 25」。Expoエリアで、「CHAD 2」という翻訳AIサービスを紹介した。

 お笑いコンテンツの海外展開で果たす翻訳サービスの役割は大きいが、従来の機械翻訳には独特のニュアンスが伝わりきらないという課題があった。そこで、特有の言い回しを翻訳に反映するなど、お笑いの魅力を伝える技術的な工夫が求められていた。

 こうした中、データ分析のブレインパッドの技術協力を得て開発したのが、グーグルの生成AI「Gemini(ジェミニ)」を活用したCHAD 2だ。

 吉本興業保有の動画データや用語集などを生かし、AIが笑いを構造的に理解できるようにした。芸人で字幕翻訳家としても活躍するチャド・マレーン氏の助言も、AIの高度化に役立てた。

 具体的には、AIが文脈や場面を認識し、段階的に翻訳を推敲。関西弁や造語といった表現にも対応できるようにした。従来の音声認識では、例えば、関西弁で母親を指す「オカン」を「悪寒」と認識し、誤訳につながるケースがあった。新サービスは、正しく「お母さん」と翻訳することが可能だ。

 FANYプラットフォーム事業部の田中爽太氏は「言語の壁を越えて、世界中にお笑い文化を発信できるようにしたい」と意欲を示した。

 ブースでは、吉本興業所属の人気お笑いコンビ「EXIT」のAIアバター「AI EXIT」のデモンストレーションも披露。ツッコミ担当で知られるりんたろー。氏の分身「リンタロイド」に来場者が話しかけると、独特の軽快なトークを繰り広げた。