2024.08.30 【ソリューションプロバイダー特集】主要ソリューションプロバイダーにアンケート 電波新聞社調べ
電波新聞社は、主要ソリューションプロバイダー各社に2024年後半の市場、デジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組み、海外展開、働き方改革についてアンケート調査を実施し、先の見通しを探った。アンケートは毎年新年と夏の2回行っているもので、各社の景況感の見方と施策、成果を定点観測している。今回は24年8月5日から26日まで実施し、31社から有効回答を得た。
7月以降の受注 半数以上が「増加」見込む
24年後半のICT(情報通信技術)関連市場は引き続き堅調に推移しそうだ。クラウドやAI(人工知能)などデジタル技術を活用した投資は旺盛で、デジタルへの移行はさらに進むとみられる。
アンケート結果によると、足元の受注状況は悪くなく4~6月は「大幅増加」も含め6割以上が「増加」と回答した。7月以降も半数以上が「増加」を見込むが、10月~25年3月は「減少」と回答した企業が増えている。25年以降は依然として半数が「増加」とみているものの、全体では前年並みの割合が高くなるとみられる。
業種別の受注見通しは製造業が好調だ。前回調査時からは「増加」の割合は減ったものの依然半数が「増加」を選択した。流通は前回よりも「増加」の回答が一気に減り約5割から2割強に落ち込んだ。金融は半数が前年並みとなり、「増加」と「減少」が一定数あった。客先の案件変動の影響とみられる。通信業は前回調査から比べると「減少」の割合が減った。公共は約4割が「増加」で、「大幅増加」の回答もあった。自治体システム標準化が進むことからしばらく堅調に動きそうだ。
市場の見通しについては「緩やかに成長し続ける」との回答が前回同様87%。一方、成長期間を24年の9~12月頃までとみる動きもあり、先行きを懸念するところもあった。
為替の影響については、出ていない企業が前回より増え49%になった。良い方向に出ている企業が前回28%から29%と増加したのに対し、悪い方向で出ている企業は前回の27%から22%に減った。
24年後半に伸びる分野は前回から上位に変動はなく、「クラウド」「セキュリティー」「AI」となった。今回、「AI」とは別に「生成AI」の項目を新設したところ4位に入った。全体の傾向は大きく変わらないが、「IoT」と「カーボンニュートラル」は前回から大きく減った。逆に「コンサルティング」や「チャットボット」は回答数が増えた。
24年の重点施策は前回同様に「AI関連の取り組み」が首位となった。前回2位だった「サービス事業へのシフト」は4位、前回4位の「セキュリティーの強化」が2位に浮上した。前回から回答が減ったのは「サービス事業へのシフト」「デジタルマーケティング」「アジャイル開発」など。今回新設した「量子コンピューターの取り組み」を選択した企業は一部だった。後半はAIとセキュリティーがカギになりそうだ。
DX関連サービス 「AI組み込み」が2位浮上
デジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組みについては、提供している企業は97%(前回97%、前々回97%)となり、引き続き大半の企業が取り組んでいる。
DX関連のサービスでは、前回同様に「クラウド」が首位だった。前回2位だった「IoT」が3位に、前回回答数を減らして3位だった「AIを組み込んだシステムやサービス」が2位に浮上した。
DX関連の売り上げ状況については「伸びている」と回答した企業が大半を占めているが、前回同様に一部で「伸びていない」との回答も見られた。ただ前回までは売り上げで苦戦が見られたAIの領域で、売り上げが伸びているという回答が増え、伸びていないという回答が減り、AI関連のサービスで収益が出始めていることが分かった。今後取り組みたいサービスは、「ない」が最も多かったが、AIやメタバースの選択も一定数あった。
働き方改革の課題 コミュニケーションの改善
働き方改革については引き続き全社が取り組みを進めていた。働き方改革の取り組み内容については前回と同様の結果となり、「テレワーク」「人事制度の見直し」「AI、RPAの導入による作業の削減」の順だった。この傾向はこの1~2年で変わっていない。
働き方改革の効果については「出ている」との回答が前回同様97%だった。具体的な効果については、前回1位だった「社員満足度が上がった」が2位になり、前回3位の「生産性が上がった」が1位になった。前回2位だった「残業が減った」は3位になった。
働き方改革の課題については前回同様「コミュニケーションの改善」が最も多かった。前回3位だった「業務管理の方法」が2位、「社員のモチベーション向上」は3位に落ちた。在宅勤務者とのコミュニケーション改善は依然として多くの企業が課題視していることが明らかになった。
今回から在宅勤務の今後の方向性について聞いた。約7割が全社で導入する考えだが、「制限を付けて運用する」が2割強あった。「なくなる」という回答はなかった。
海外事業の今後 「増やす」55%、「減らす」10%
グローバルに関しては「海外展開している」と回答した企業が67%(前回75%、前々回76%)となり、撤退したところは6%(前回6%、前々回3%)あった。海外事業の多くは営業拠点とオフショアで、両方を展開しているところも多い。研究開発拠点を置くところもある。海外売上高比率は前回同様「0~3%未満」の企業が最も多く48%(前回45%、前々回54%)だった。2位は「3~5%未満」(16%)で、3位は「30%以上」(11%)だった。
海外売上高は「増えている」という回答が42%(前回35%、前々回36%)となった半面、「減っている」との回答は11%(前回13%、前々回11%)で前回から比率は減った。増えている企業は需要拡大などに後押しされた半面、減っている企業は市況の悪化影響を受けたところもあった。
海外事業の今後については55%(前回52%、前々回59%)が「増やす」と回答した一方で、「減らす」と回答した企業も10%あった。海外展開をしていない企業については、今後の予定は「ない」が56%だったが、「ある」との回答も11%あった。
今後期待できる地域は、1位が「北米」、2位が「ベトナム」で前回同様の結果だった。前回同率2位だった「インド」が4位になり、3位だった「タイ」が同率2位に浮上した。
西欧、フィリピンも依然として注目されているほか、「南米」を選択した企業も増えた。そのほかでASEAN、台湾を挙げた企業もあった。
アンケート回答企業一覧
▽伊藤忠テクノソリューションズ▽インターコム▽内田洋行▽SCSK▽NEC▽NECソリューションイノベータ▽NECネクサソリューションズ▽NECネッツエスアイ▽NECフィールディング▽NSW▽大塚商会▽キヤノンITソリューションズ▽コア▽サイボウズ▽シーイーシ▽Dynabook▽電通総研▽東芝ITサービス▽東芝情報システム▽日本事務器▽ネットワンシステムズ▽日立製作所▽日立システムズ▽日立ソリューションズ▽日立ソリューションズ・クリエイト▽ビジネスエンジニアリング▽富士通▽富士通コミュニケーションサービス▽三菱電機インフォメーションシステムズほか2社。(計31社)