2025.01.17 【情報通信総合特集】2025市場/技術トレンド 複合機

複合機業界は大きな転換期を迎えている

合弁など連携強化進む

ビジネスモデル変革など成長戦略

 複合機業界が大きな転換期を迎えている。ペーパーレス化などプリントボリュームは漸減傾向にあるが、ソリューションを起点とした複合機ビジネスは堅調に推移している。

 複合機の国内販売は、まだコロナ前には戻っていない。2024年の複合機(複写機含む)国内出荷台数は45万台と前年並みの見通しで、ピーク時の65万台以上、コロナ前の55万台に届かない。一方、複合機と連携したソリューションサービス分野は順調に市場が拡大している。

 働く環境、働き方が大きく変わり、複合機ビジネスもソリューション化、サービス化が加速。ハードからソフトへ、「モノ」から「コト」へのシフトが本格化している。

 こうした中、事務機大手各社は、メーカー間連携やビジネスモデルの変革など新たな成長戦略に向けた動きを活発化させている。

 リコーと東芝テックは昨年7月、複合機などの開発・生産を行う合弁会社「ETRIA(エトリア)」を設立した。資本構成はリコーが85%、東芝テックが15%。複合機を中心としたデバイスの開発と生産を一貫して行うとともに、両社の得意分野、強みを掛け合わせ、合併メリットの最大化を図る。

 新会社では複合機・プリンターの基幹部分の共通化や、部品や材料の共同購買、生産拠点の相互活用を進め、競争力の高い製品の安定的な供給体制を構築し、モノづくり体質の強化を目指す。また、複合機の共通エンジンの開発にも取り組む。

 富士フイルムビジネスイノベーション(富士フイルムBI)とコニカミノルタは、原材料および部材調達の連携を図る合弁会社を設立、24年度内に事業を本格的にスタートする計画だ。出資比率は富士フイルムBI75%、コニカミノルタ25%。

 両社は新会社を通じて、それぞれが保有する幅広いサプライヤーネットワークを活用し、商品の強固な供給体制の構築や業務プロセスの効率化など、事業基盤を強化。トナーの開発や生産に関わる業務提携なども視野に連携を強めていく。

 こうしたメーカー間連携の一方、各社は成長戦略を加速する。

 リコーグループは、従来のオフィスに限らず、働く人がいるあらゆる場所や空間を「ワークプレイス」と捉え、社会課題をデジタルの力で解決する施策を推進している。25年度は第21次中期経営戦略の最終年度に当たり、デジタルサービスの変革に向け、ワークプレイスプロバイダーとしてAI(人工知能)をはじめとしたテクノロジーを活用し、顧客の課題解決に取り組む。

 「デジタルサービスの会社」への転換を加速させ、25年度にはデジタルサービスで全社売り上げの60%超(22年度44%)を目指している。また、グループ企業との連携を強化。欧州でDocuWare、ワークプレイス分野で買収した米Ceneroとのシナジー、さらにNatif.aiのAI技術のグローバル展開に注力する。

 キヤノンは、21年に開始した第6次5カ年計画の最終年に当たり、総仕上げの年になる。生産は、自動化・内製化による国内回帰を促進する。無駄を徹底的にそぎ落として5カ年計画の最終目標を達成し、次なる成長に向けて盤石な体制構築を目指す。

 国内販売のキヤノンマーケティングジャパンは、新規事業を創出する専門組織R&B(リサーチ&ビジネスデベロップメント)、スタートアップ企業とのオープンイノベーションを加速するCVCファンドを立ち上げ、未来志向に向けた戦略を加速している。

 富士フイルムBIは事業の主軸を「ビジネスDX」にシフトするため、ソリューション事業で、クラウドサービスの導入から運用支援までワンストップで提供する会社を設立したほか、M&Aにより基幹系ソリューションの提供体制を強化している。30年度にソリューション・サービス関連売上高を7000億円以上にする計画だ。富士フイルムグループ独自のIT・AI技術アセットを活用した提供価値の拡大を目指す。

 同社は、昨年から「富士フイルム」ブランドの欧米での販売を本格化させている。

 コニカミノルタも、高収益企業への回帰を掲げた中期経営計画の最終年度に当たる。事業の選択と集中を完遂し、25年度からは成長のフェーズに入る。また、セイコーエプソンは今年を成長の足場としてしっかり固め、中長期の事業の成長に向けた取り組みを本格化させる。

 各社ともデータ活用やAIを成長戦略の軸に据える。

 リコーは、顧客の業務効率化や課題解決での活用を目的に、企業ごとのカスタマイズを容易に行える700億パラメーターの大規模言語モデル(LLM)を開発した。また、生成AIアプリ開発プラットフォーム「Dify(ディファイ)」を開発する米LangGeniusと販売・構築パートナー契約を結び、国内での提供を開始した。国内販売会社のリコージャパンは、社内で「AIエバンジェリスト」育成制度をスタートさせた。

 コニカミノルタは「データ活用×AI」を社内業務に展開。コニカミノルタジャパンは産学連携で、AIで技能伝承を支援するサービスを開発した。

 東芝テックは、AIとデータサイエンスによるDXを支援する新会社「ジャイナミクス」を設立した。顧客課題解決につながるDXソリューションを提供していく。

 カーボンニュートラルに向け、循環型経済(サーキュラーエコノミー)への取り組みもますます重要になってくる。

 富士フイルムは昨年、欧州地域での環境規制強化の動きに対応し、オランダに「サーキュラー・マニュファクチャリング・センター」を開設した。セイコーエプソンは、乾式オフィス製紙機「PaperLab」で古紙の回収・再生の循環効果を訴求する。また、各社は部品リユース率を高めた再生機の発売を強化している。