2025.06.27 【育成のとびら】〈52〉2025年の新入社員の約3人に1人が、内定期間中の先輩社員とのコミュニケーションに不足感

 前回、2025年度の新入社員の調査で、内定期間中に会社からしてもらいたかった支援で約4人に1人が「先輩社員との関係を築く機会」を選んだことを紹介した。

 今回は、新入社員が先輩社員とのコミュニケーションに不安を感じている様子を裏付ける、もう一つの調査データからコミュニケーションの大切さについて考えてみたい。

 当社ALL DIFFERENTとラーニングイノベーション総合研究所が25年入社予定者を対象に行ったアンケートで、内定先企業とのコミュニケーション量の充足感について確認した。

 それによると、「内定期間中、内定先企業のコミュニケーションの量が十分だと思うか」という問いに対し、人事・採用担当者について「十分だと思う」と回答した新入社員は70.0%、「十分だと思わない」は2.2%だった。

 同期については「十分だと思う」が43.6%、「十分だと思わない」が12.8%。社長・役員については「十分だと思う」が35.5%、「十分だと思わない」が7.7%。先輩社員については「十分だと思う」が35.5%、「十分だと思わない」が12.5%となった。

 先輩社員とのコミュニケーションについては「十分だと思わない」と「十分だとあまり思わない」を合わせると、3人に1人が不足感を持っていることが明らかになり、社長・役員への不足感を超え、最も高くなった。

相談役の設定を

 先輩社員とのコミュニケーションに不足感を抱える新入社員が多い背景には、関わりの量の不足だけでなく、深さの不足があるかもしれない。先輩社員と会話を交わす機会はあっても、表層的なやりとりにとどまってしまい、本当に教えてほしいことを質問できていない可能性も考えられる。

 今回の調査結果は内定期間中の状態を質問したため、入社後の取り組み内容によっては、今後改善していくことは十分可能だ。配属後は、先輩社員とのコミュニケーションの量や接点の確保も重要だが、メンター(指導者・助言者)制度を導入することで特定の「話しやすい相手」ができ、新入社員の抱える不安を払拭できそうだ。

 メンター制度は、社会人歴の浅い新入社員や後輩社員を知識や経験のある先輩社員が支援する制度のこと。OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング=実地研修)トレーナーや直属の上司以外の先輩社員が担うケースが多く、通常は精神支援やマインド・ノウハウの伝承などを目的に置いている。

等身大の経験談

 新入社員はメンターとの定期面談で悩みの相談やメンターの等身大の経験談を聞くことで、同じ不安や失敗があった際の道しるべを見いだしやすくなり、社会人として突き当たるさまざまな壁を乗り越える手助けとなる。

 一方のメンター役に選ばれた先輩社員には、積極的な傾聴を軸にしたコミュニケーション力やコーチング力、中立的な立場を守る高い倫理感などが求められる。そのため、制度導入の際はこれらの知識・スキル・心構えを体系的に学ぶ研修を実施することで、新入社員への支援をより安定してできるようになるはずだ。

 新入社員の成長を、上司やOJTトレーナーだけでなく先輩社員も交えた仕組みでサポートすることで、新入社員は安心して着実な自己認識と成長意欲を養うことが期待できるだろう。

 次回以降は、業種別の25年度新入社員の傾向について紹介する。(つづく)

 〈執筆構成=ALL DIFFERENT〉

 【次回は7月第2週に掲載予定】