2025.03.04 新東京オフィス開設、次世代車にらみ半導体開発を加速 デンソー

より良い空間で共創を加速

新東京オフィス外観新東京オフィス外観

奥村氏の映像作品が展示されるエントランス奥村氏の映像作品が展示されるエントランス

新東京オフィスについて説明する横尾経営役員新東京オフィスについて説明する横尾経営役員

 デンソーが東京都港区に新東京オフィスを開設し、報道陣に公開した。東京エリアに分散していた6拠点を新オフィスに集約。今後は羽田にある「Global R&D Tokyo, Haneda」と合わせた2拠点体制で事業を推進する。愛知県刈谷市の本社や研究所とも連携し、先進技術の開発を加速させる狙いだ。

 同社は2016年に東京支社を品川から日本橋に移転・拡張し、18年には品川に「Global R&D Tokyo」を開設。20年には自動運転技術などの開発拠点として、「Global R&D Tokyo, Haneda」を設立し、研究開発から実証試験までを一貫して行える体制を整えてきた。今回の新東京オフィス開設により、営業、技術、新価値領域、広報渉外、ITなど9つのグループ会社が集結。東京エリアの社員数も、15年の約800人から24年には約1700人と倍増している。

 新東京オフィスのコンセプトには「共創の促進」「基盤の共通化」「地域への貢献」の3点を掲げ、社内外のコラボレーションを強化。バックオフィス機能の一元化により、オフィスコストは約20%削減できる見込みだ。

 2月28日の会見で、横尾英博経営役員は「東京エリアの使命は、新たな価値として製品やソリューションを生み出し、社会に貢献すること。新東京オフィスはアクセスにも優れ、共創の場として最適。産学官、顧客、パートナーとの連携を強化するとともに、優秀な人材獲得にも取り組む」と述べた。

 拠点の集約により、業務の効率化と技術開発の加速を目指していく。特に、25年1月に発足したSoC開発部は、半導体メーカーやファウンドリー、ソフトウエア開発企業との連携を強化するため、企業が集積する東京エリアでの活動が不可欠。西村忠治ソフトウェア統括部長は「SDV(ソフトウエア定義車両)化の流れはソフトウエア開発をより重要なものに押し上げるとともに、東京エリアのミッションも高まる。デンソーのソフトウエア戦略は実装力、人財力、展開力の3点。これらをベースにソフトウエアを基軸とした新たな競争優位性の獲得を目指す」と強調した。

 デンソーは30年にソフトウエア人材を現在の1.5倍となる1.8万人に増やし、35年の事業規模も現在の4倍となる8000億円に拡大する方針を掲げる。モビリティエレクトロニクス事業グループエレクトロニクス事業部の杉本英樹SoC開発部長は「ソフトウエアによって自動車の機能をアップデートできるSDVが今後、普及拡大していくと考えると、最適なSoCを自分たちで開発する必要があるため、SoC開発部を発足した。SDV化やAI活用による価値向上を最大化する領域に、優先的に取り組んでいく」と述べた。

 新東京オフィスには、共創を促進するスペース「集(TSUDOI)」や、各部門の活動を展示する「D+(ディープラス)」、外部企業との協業を支援するプロジェクトルームを設置。「有楽町アートアーバニズム[YAU]」のプロデュースにより、「DENSO×YAU共創アートプロジェクト」を始動。第一弾として、若手アーティスト奥村研太郎氏の映像作品をエントランスのディスプレイで上映している。

<執筆・構成=半導体ナビ