2025.03.13 エッジAIに新風 ルネサス、ミドルレンジMPU量産へ
ミドルレンジをターゲットとする「RZ/V2N」
ルネサスエレクトロニクスが、独自のAI(人工知能)アクセラレーター「DRP-AI」を内蔵したミドルレンジのマイクロプロセッサ(MPU)「RZ/V2N」を発表した。端末側でのAI処理を実現する「エッジAI」市場の拡大を受け、高性能・低消費電力の組み込み向けプロセッサを強化。自動走行ロボットやAIカメラ、ドライブレコーダーなどの用途を想定している。量産・販売は19日から開始する。
ルネサスのRZ/Vシリーズは、エッジAIを活用する組み込み機器向けのMPUファミリーで、高いAI性能と低消費電力を両立するのが特長だ。従来のハイエンドモデル「RZ/V2H」は、1秒間に80兆回の演算が可能な80TOPSの性能を持つ。ローエンドの「RZ/V2L」(0.5TOPS)に続き、今回発表されたRZ/V2Nは1~10TOPSの性能を持つミドルレンジ品。これにより、RZ/Vシリーズはハイエンドからローエンドまでのラインアップがそろった。
RZ/V2Nはパッケージ面積を15ミリメートル角に抑え、RZ/V2Hと比べて38%小型化を実現。AI性能と低消費電力の両立により発熱を抑え、冷却ファンを不要にしたことで、組み込み機器の小型化とシステムコストの削減が可能となる。
新製品には最新のAIアクセラレーター「DRP-A13」を搭載。ルネサス独自の「枝刈り技術」により、AI推論処理の一部を省略し、メモリー使用量を削減することで、実質的な演算性能を向上させ、最大15TOPSのAI処理を実現する。CPUには「Arm Cortex-A55」4コアと「Cortex-M33」1コアを搭載。各種高速インターフェースや4K対応カメラ機能も備えている。
エンベデッドプロセッシングプロダクトグループ、プロダクトマーケティング第二部の川嵜圭吾部長は「組み込み機器には幅広いアプリケーションがあり、手頃な価格で高いAI性能を実現し、かつ低消費電力なMCUが求められる。ミドルレンジ品が加わったことでより多くのユーザーに使ってもらえる」と話す。
評価ボードキットも19日から購入可能。さらに、小型組み込みコンピュータ「SOM(システム・オン・モジュール)」も複数のベンダーから発売される予定だ。
<執筆・構成=半導体ナビ>