2025.04.23 医療・金融など各データの活用促進へ法整備 政府が検討着手

デジタル行財政改革会議で発言する石破茂首相(右から2人目) 出典:首相官邸のホームページより

 政府は、データの利活用を促す制度の整備に向けて動き出す。石破茂首相は22日に首相官邸で開いたデジタル行財政改革会議(議長・石破首相)で関係閣僚に指示した。医療や教育、産業、金融などの各分野で有効活用されていないデータが企業や業界の壁を越えて社会全体で広く利用できるよう、横断的な法制度のあり方について具体的な検討に着手。6月に基本方針をまとめることを目指す。

 データの利活用を巡っては、情報の流通を意識しないプライバシー関連制度や慣行などが足かせとなり、企業が囲い込んでいるという指摘もある。こうした中、生活の利便性向上や産業競争力の強化につながるAI(人工知能)の普及を促すという観点からも、有用なデータの利活用が「必須の課題」(石破首相)となっている。そこで政府は、欧米諸国の関連法制度を踏まえるとともに、プライバシーや知的財産の保護、安全保障といった多様な観点も留意しながら、新たな法制度の構築も含めて検討を重ねる方針を共有した。

 医療分野を見ると、電子カルテや学会保有の医療データなどを患者の同意に依存することなく、創薬や医学研究などに2次利用できるよう環境を整備。金融分野では、家計の資産形成を効果的に進めるという観点からデータの利活用を促す取り組みに焦点が当たっており、個別分野の議論の行方にも注目が集まりそうだ。

 石破首相は同会議で、「6月の取りまとめに向け、デジタル行財政改革を加速・深化させてほしい」と指示。改革の1つとして、デジタルや新技術を徹底的に活用した「地方創生2.0」の実現を目指す方針を表明した。さらに2015年に提供を始めた「地域経済分析システム(RESAS)」にも触れ、新地方創生交付金も活用しながら、こうした取り組みを一層普遍化するよう求めた。RESASは産業構造や人口動態、人の流れなどのデータを提供。地域経済に関連する多彩なビッグデータを「見える化」する手段として、各自治体の政策の現場で幅広く活用されているという。

全国10カ所で自動運転を事業化

 さらに石破首相は「令和の日本列島改造」の実現に向けて、上下水道などのインフラやモビリティー(移動体)、教育などの改革を加速させる方針も打ち出した。中でもインフラでは、50年を見据えた上下水道のあり方について検討し、それと整合した形でデジタルトランスフォーメーション(DX)技術の実装に向けた具体的な方策をまとめたい考えだ。モビリティーでは、特定の条件下でドライバーが不要な「レベル4」の自動運転タクシー・バスの事業化を推進するため、全国10カ所程度を「先行的事業化地域」に指定して支援。持続可能な自動運転のビジネスモデルを構築し、地方で深刻化する移動手段の不足問題の解消につなげることを狙う。合わせて、自動運転に関する事故原因の究明体制を構築する方針も示した格好だ。