2025.07.11 【電子部品技術総合特集】自動車用電子部品の動向 技術進化に向けR&D活発化、CASEやSDV化など
AIとモビリティーの融合が進む(デンソーが人とくるまのテクノロジー展に出品したドライブエージェントロボットを活用したドライブ体験デモ)
電子部品メーカー各社は、自動車の技術進化に向けたR&Dを活発化させている。最近では、自動車アーキテクチャーの変化に照準を合わせた統合ECU向けデバイス開発やxEV(電動車)の高電圧化をサポートするパワー系デバイスなどの技術開発が進展。組み立て工程自動化によるコスト低減も追求されている。各社は、中長期のビジネス拡大のための最重点市場の一つに車載市場を掲げ、次世代ニーズに対応した技術開発を推進する。
世界の自動車市場では、「CASE(コネクテッド、オートノマス、シェアード&サービス、エレクトリック)」をメガトレンドとする技術革新が進み、IT・エレクトロニクス技術の重要性が一層高まっている。自動車のSDV(ソフトウエア・デファインド・ビークル)化も、車載電装機器や電子部品の高性能化を促進する。
自動車市場は、電子部品・デバイス産業の成長を支える最重要市場の一つ。自動車の世界生産台数は、乗用車と商用車(トラック、バス)を合わせ、2010年代後半には年間9500万台前後まで拡大した。
世界の自動車生産台数は、20年には新型コロナ拡大に伴う消費低迷や企業活動停滞により、年間7600万台から7700万台程度まで急落。21年も世界的な半導体不足などが響き、急速な回復には至らなかった。22年も半導体不足の長期化や上海地区ロックダウンなどの影響で、期待した生産台数の伸びには至らなかった。
23年は、ようやく半導体調達難が緩和され、日本や北米を中心に自動車各社の挽回生産が進展。一方、最大市場の中国ではEV(電気自動車)以外の自動車生産が低調に推移したが、23年トータルでの自動車世界生産台数は年初時点の予想をやや上回り、9000万台近い水準に達した。
24年の自動車世界生産台数は、年初段階では9200万台前後への拡大が予想されていたが、中国系EVが堅調だった一方で、欧米を中心としたBEV(バッテリーEV)市場の減速や、高インフレによる世界的な新車販売台数伸び悩みが響き、当初予測を下回る8900万台前後となった見込み。
25年の自動車世界生産台数も、現状では24年と横ばい程度が予想されており、過去のピーク時の台数を更新できない状況が続いている。
一方で、電子部品メーカー各社の車載向けビジネスは、20年秋ごろから大きく立ち上がり、21年、22年、23年と堅調な推移が継続した。自動車の総生産台数の伸びが小幅にとどまるなかでも、ADAS機能搭載車両の増加や、xEV化に伴う車1台当たりの電子部品搭載数増加などが、電子部品各社の車載ビジネスの成長を支えた。
24年は、BEV市場の減速や、日系自動車メーカーの中国市場でのシェア低下などが日系電子部品企業の車載ビジネスにも影響を与えたが、そうしたなかでも、ADAS需要の増大や堅調なハイブリッド車需要などが各社の事業を下支えした。
25年も、CASEやSDVなどをキーワードとする車の高機能化進展が、付加価値の高い車載用電子部品の需要増大を後押しすることが期待されている。
中国市場を強化
「電動化」については、直近では欧米市場を中心に減速傾向が強まっており、日系や欧米系の主要自動車メーカーによるBEV投資先送りなどの発表も相次いでいる。しかしながら、世界的な「脱炭素/カーボンニュートラル」の潮流の中で、中長期でのxEVシフトは大きく進展していく見通し。また、世界最大のEV市場である中国では、BYDをはじめとする中華系有力EVメーカーによる生産が好調に拡大していることから、日系電子部品各社の中国EV市場向け拡販強化のための体制拡充などが進展している。
「オートノマス」では、自動運転車/完全自動運転車の実現に向けた開発競争が国内外で活発であるため、これらに照準を合わせた高性能な電子部品開発が進展している。同時に、将来の完全自動運転車での車室内のリビングルーム化やビジネスルーム化に向けた提案などにも力が注がれている。
最近の新車開発では、自動車の高機能化に伴い、統合ECUを中核とした新たなアーキテクチャーの導入も広がりつつあり、統合ECU向けの高性能・高信頼性デバイス開発にも力が注がれる。
また、中華系EVメーカーは、新車の開発速度が極めて速く、日米欧のプレミアムカーメーカーの約半分の1年半程度で開発を完了するケースもあるため、部品メーカーに対する開発リードタイム短縮への要求も厳しい。日系部品メーカーでは、これらに対応するための開発リードタイム短縮も重要テーマとなっている。また、組み立て工程自動化による組み立て費用低減なども追求されている。