2026.03.26 遠隔地映像をAIが解析 長距離映像モニタリング技術開発 シャープ

放牧牛を対象とした実証実験の映像解析の様子=牛の行動の違いを枠の色で分類(緑色:起立、黄色:捕食中)するとともに現在(左)と直前(右)(実験では40秒前)の映像を比較し、環境の変化を画面上部に表示

映像をもとにしたAIによるナレーション(画面下部)を生成映像をもとにしたAIによるナレーション(画面下部)を生成

映像をもとに、AIが生成した映像クイズ(撮影=大分朝日放送、撮影協力=大分マリーンパレス水族館「うみたまご」)映像をもとに、AIが生成した映像クイズ(撮影=大分朝日放送、撮影協力=大分マリーンパレス水族館「うみたまご」)

 シャープは、5~10km離れた場所から伝送された4K映像をAI(人工知能)が解析し記録する「長距離映像モニタリング技術」を開発した。

 京都大学の原田博司研究室、早稲田大学の渡辺裕研究室、大分朝日放送と共同で、情報通信研究機構(NICT)から受託した「日米豪国際連携を通じた超カバレッジBeyond 5G無線通信・映像符号化標準化技術の研究開発」の一環として開発したもの。

 新技術は、京大が開発した超短波(VHF帯)を用いた無線伝送方式により4K映像を長距離伝送できる「長距離映像伝送技術」と、事前学習なしで対象物を判別し状況や行動変化の記録をリアルタイムで行うシャープの「動的映像モニタリング技術」で構成される。

 開発した長距離映像伝送技術は、携帯電話などで使用される無線技術と比べて長距離を直接伝送できる。

 携帯電話の無線技術では、基地局を数百mから数km間隔で面的に配置し通信エリアをつくる一方、新技術は京大が発表したVHF無線技術と映像圧縮技術を応用することで、5~10km離れた通信装置間で映像データを直接伝送できる。

 離島など基地局の設置が困難な場所や、牧場など広大なエリア内での4K映像の伝送が実現できる。

 また、映像解析に当たり、従来のAI技術では動物など解析対象物の種別や行動、位置などの情報を学習用データにラベル付けする準備作業や、AIの事前学習が必要なため、利用開始までに時間を要することが課題だった。

 これに対し、動的映像モニタリング技術は、画像と言語を扱うAIに、目的動作の指示文であるプロンプトと、前処理と後処理を適用することで、より短時間の準備で利用開始できる。

 このため、将来的には、災害現場や避難所などの遠隔地からのモニタリング、危険感知など幅広い用途での利用が見込める。

 シャープは、同技術の有用性を確認するため、昨年3月から今年1月にかけて国内外で実証実験を実施。国内では、動物園や水族館で飼育されている動物の行動把握や航行中の船舶からの映像伝送を実施。国外では、オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)と遠隔地からの放牧牛のモニタリング実証実験を行い、さまざまな分野に展開できることを確認した。

 現在、同社は、開発した新技術で使用している無線通信と映像圧縮技術をさらに発展させるため、国際標準として策定される次世代通信規格「Beyond 5G」、次世代動画圧縮規格「Beyond VVC」での採用に向け、無線通信や映像圧縮の国際標準化会合での提案を進めている。

 今回実証した動物や船舶にとどまらず、交通インフラや災害対策など、多分野へ適用できるよう、長距離無線通信とAI技術を通じたDX(デジタルトランスフォーメーション)支援に取り組む。