2020.08.28 【5Gがくる】<9>5Gが変えるコロナ後のテレワーク ①

 新型コロナウイルスの感染拡大が終息した後もテレワークは続き、ニューノーマル(新しい日常)として定着するのだろうか? 5Gの役割と共に3回にわたって考えてみたい。

 再び歴史で見てみよう。江戸時代までのワークスタイルは「職住近接」であった。城下は武士が暮らす武家屋敷に囲まれ、町屋敷は表店と庶民が暮らす裏長屋が連なり、職場と住居が近接していた。近代以降は、工業化によって膨張した労働人口を都市部の職場から離れた住居に移し、鉄道による通勤で結ぶ「職住分離」が常態となった。

 いずれにしても、勤務環境が整備されているのは職場だけで、全従業員が一斉に出勤する限り密な状態は避けられない状況は昔から何も変わっていない。

 それがコロナの襲来で環境は一変し、テレワークによって住居そのものを職場にする「職住融合」とも呼ばれる「在宅勤務」への早期移行が喫緊の課題になってきた。多くの企業がテレワークを検討する中、最近は自然豊かな地方へ移住し、今の仕事をそのまま続けたいという、移住希望者も増えるなど新しい動きも出てきている。

ワイヤレスが鍵

 もともと、テレワークはICTを活用して出先から会社に連絡を取るなど、営業の業務効率化から始まった。筆者も2005年ごろから、当時在籍していたNECでテレワークの一形態であるモバイルワークによる「フリーアドレス」の普及を推進していた。その手順はドラスティックで効果てきめんだ。

 まず、クラウドを活用し紙のファイルを電子ファイル化、いわゆるペーパーレス化し机上の山積み書類を廃棄する。次に、社内LANをWi-Fiによりワイヤレス化し、机上の固定電話とデスクトップパソコン(PC)を全て撤去する。代わりに、どこにいても社内システムと内線番号が使える携帯電話(当初は3G+Wi-Fi、後に4G/5Gスマートフォン)と軽量なノートPCをモバイル端末として全員に配布し携行させるというものだ。結果、固定席を廃止し作業場所を自由に選べる「フリーアドレス」へ移行でき、ワークスタイルは一変するという流れになる。

 これにより例えば朝一番、出先からスマホで社内システムへログインし、グループウエアで上司、部下のスケジュールとメッセージを確認する。出先での社内資料の閲覧や修正もできる。客先との打ち合わせ後は、職場に戻って好きな席に座り、かばんからノートPCを取り出し再び社内システムへログインするといった具合だ。

コロナ後のテレワーク

席数半減も可能に

 外出の多い営業や販売、技術者などの職種にフリーアドレスを活用すれば、フロア面積に比例する席数を従業員数の半分まで減らすことも不可能ではない。つまり、「業務効率化」だけでなく「オフィスコスト削減」も同時に実現できる。もちろん自由に席を移動できるので、ソーシャルディスタンス(社会的距離)を確保しやすい。このフリーアドレスの延長線上に「在宅勤務」がある。そして、Wi-Fiに代わる高速・安全なワイヤレスがローカル5Gだ。(つづく)

<筆者=モバイルコンピューティング推進コンソーシアム上席顧問・国士舘大学非常勤講師・竹井俊文氏>