2020.12.18 【メーカーズ ヒストリー】アキュフェーズ物語〈1〉究極の音創りを求めて

プリメインアンプの新フラグシップ「E-800」

 オーディオファンなら誰でも知っているアキュフェーズ・ブランド。早いものでこの6月に創業48年目を迎えた。2022年の創業50周年に向けて、昨年は50周年記念モデル第1弾としてプリメインアンプの新フラッグシップ「E-800」(98万円)を、今年は50周年記念モデル第2弾としてプリアンプのフラグシップ「C-3900」(190万円)を発売した。

■究極の音創りを求めて創業

 アキュフェーズは春日仲一(故人)、春日二郎(同)の兄弟が社長、副社長として1972年に「ケンソニック」として新発足したのがその始まりだが、社名を「ジローエレクトロニクス」とするプランもあった。その10年後(82年)に社名をブランドと同じアキュフェーズに改めて統一した。

創業者の春日仲一(左)、春日二郎(右)の両氏

 特に、国内メーカーのブランドが皆無に近い未知のハイエンド・オーディオの道をひたすら突き進む、つまり「究極の音創り」に挑む「創業の精神」は春日二郎氏の熱意と信念から生まれたと言っても過言ではない。

 起業にあたっての初期投資は所有していた上場企業株を売却したほか、銀行から必要資金を調達し、充当した。二郎氏の経営手腕に対する銀行の信頼は厚く即決で融資している。

 48年前の創業時を振り返ると、ある会社での経営方針を巡っての主導権争いがあったことを忘れるわけにいかない。ある会社というのは70年前後にオ―ディオ御三家(パイオニア・トリオ・サンスイ)として持てはやされた1社、トリオのことである。

 同社では、春日仲一氏が営業部門、春日二郎氏が技術部門を統括する副社長として腕を振るい、両氏の義兄にあたる中野英男社長(故人)とともにオーディオ専業メーカーとしての地歩を築き、成長企業として脚光を浴びていた。

 毎年、3-4月の進入学シーズンともなるとオーディオ御三家のステレオセットが飛ぶように売れるのは、中学から高校へと進む世代(イチゴ世代)がこぞって購入したからであり、このトレンドは1990年代まで続いていく。

 ステレオセットの購入者といえば、「趣味の世界」を楽しむ音楽ファンなどが多かったが、折からの歌謡曲ブームという好条件にも恵まれて一挙に大衆化が進む。その需要急増に合わせて各社とも普及価格帯の品ぞろえを増やしていく。

■ステレオブームは団塊世代が主導

 中学から高校へと進むイチゴ世代が入学祝いとして一斉にステレオを購入する、そのトレンドをつくる先駆けとなったのが、いわゆる団塊の世代である。47年(昭和22年)-49年(昭和24年)の出生数約810万人という大きな塊を形成しているこの世代は、その一挙一動が何かと注目を集め、その影響力も大きかった。彼らがファッションリーダーとして若者市場の流行作りに一役も二役も果たすようになっていくのは必然の勢いだった。(つづく)