2021.01.29 【5Gがくる】〈27〉5GにとってWi-Fi6は敵か、味方か? ①

 戦国時代、合戦において敵味方を見分ける方法として、旗指物(はたさしもの)と呼ばれる鎧につけた旗があったが夜襲では旗の家紋や色などがよく見えないため、あまり役に立たなかった。守安公書記によると、本能寺の変で明智光秀陣営が奇襲の際に取った方法が「相手の足元を見て織田信長陣営と判断せよ」というものだったらしい。寝入りばなの急襲ゆえ足に何も装着する暇がなかったからだろう。

 時を戻そう。5Gにとって同じ超高速性を有する「Wi-Fi6」は、敵なのだろうか、味方なのだろうか?何も知識がない暗闇の中では判断が難しいはずだ。そこで「5G」と「Wi-Fi6」の違いは何で、特に私設網における「ローカル5G」との違いはどこにあるのか-。両者のメリットとデメリット、適材適所で活用するユースケースにスポットライトを照らしてみよう。

共通点は無線通信

 まず5GとWi-Fi6の共通点は電波を利用する「ワイヤレス(無線)通信」であることだ。ところが同じ無線でありながら5Gが「モバイル(移動)回線」であるのに対して、Wi-Fi6は「固定回線」なのだ。

 5Gや4G/LTEが、サービスエリア内を端末が移動しながら通信するのに対し、従来のWi-FiやWi-Fi6は端末がほぼ固定された状態で通信する。この違いは大きい。

 例えば、小規模オフィスや一般家庭の固定インターネット環境では、光回線をはじめとした固定回線が宅内まで引き込まれWi-Fiルーターに接続されている。そのWi-Fiルーターから無線が発せられ、ノートPCやタブレット、スマートフォンなど、家族や従業員の端末までがインターネットに接続される仕組みだ。

 Wi-Fiアクセスポイントのアンテナから弱い電波が放射され、各端末まで固定回線を延ばしていることになる。イメージ的には、データが流れるホース(固定回線)の先についているシャワーヘッドから、全方位にデータを乗せた電波が吹いているようなものといえるだろう。

 従来のWi-Fiの多くは、1本ずつ電波を吹いているため複数端末をつなぐと順番待ちになり速度が落ちてしまう問題があった。これがWi-Fi6では、上りも下りも光回線の超高速性を損なわないよう最大8端末へ同時に8本の電波を超高速で吹いているため、複数接続しても速度は落ちない。

5Gは1桁大きい

 ここで、アンテナから吹いている電波が届く範囲をセルというが、Wi-Fi6のセルは光回線を若干延長するだけでよいから非常に小さい。一方で5Gのセルは、モバイル(移動)回線になるため端末を移動しながら使える範囲が必要でWi-Fi6のセルよりもずっと大きい。

5GとWi-Fi6

 その違いはWi-Fi6が10メートル程度に対し5Gは100メートル規模と1桁大きく、広い土地や大きな建物も含まれる。これだけでもそれぞれに特徴がありそうだがWi-Fi6と5Gは競合するのだろうか?(つづく)

〈筆者=モバイルコンピューティング推進コンソーシアム上席顧問・国士舘大学非常勤講師・竹井俊文氏〉