2021.03.24 【関西エレクトロニクス産業】5G〝大阪発〟の5Gビジネス創出

クロスラボの入り口

官民連携 クロスラボ活動本格化

 2025年の「大阪・関西万博」に向けた5G技術による新たなビジネス創出の動きが始まった。大阪市、ソフトバンクなど4者が20年10月開設した官民連携のオープンラボ「5G X LAB OSAKA」(ファイブジー・クロス・ラボ・オオサカ、以下クロスラボ)が活動を開始して半年経過、5Gを活用した新しいビジネス創出の取り組みを大阪から世界へ発信している。

 クロスラボは大阪市、ソフトバンク、大阪産業局、i-RooBO Network Forum(アイ・ローボ)の4者が中小企業向けのビジネスサポート拠点「ソフト産業プラザTEQS」(大阪市住之江区南港北、ATCビル内)に開設。

 4者のうち、大阪産業局とアイ・ローボは「AIDOR(アイドル)共同体」という名称のテクノロジービジネスの創出支援を目的にした組織を構成しており、AIDOR共同体がTEQSを運営している。

 TEQSは、事業立ち上げからサービス開始までワンストップで支援する大阪市によるテクノロジービジネスのサポート拠点になっている。

 5Gは日本では現行主流のLTE(4G)の次世代サービスとして携帯3社が20年3月に始めた。「超高速」「低遅延」「多数同時接続」という5Gの特徴を使えば生産活動の向上や新しいサービスを創出することができ、社会が大きく変わると期待されている。

 クロスラボは、5G技術検証のためにソフトバンクがトライアル環境を提供する施設「5G×IoT Studio」を通じ、5G関連ビジネスの創出を支援する。

 限定された施設内で5Gを利用する場合の「ローカル5G」だと施設運営者が5G用の周波数免許を取得する必要がある。しかし、クロスラボは通信事業者としてソフトバンクが既に免許を取得しているため、利用者にとって免許取得の手間が省ける。

 クロスラボは「検証ラボ」と「展示・体験ルーム」で構成されている。

 検証ラボには外部からの電波を遮断するシールド設備や試験用基地局が設置されており5Gや4Gの試験用電波を放射することで新たな製品やサービスの開発と検証を行う。

30点超す関連展示

 展示・体験ルームには5G関連の機器を展示、デモを通して5Gを体験できる。昨年10月のオープン時25点だった関連展示が3月には30点超に増えるなど一段と充実してきた。

 昨年暮れには住友電気工業がクロスラボで工場IoT用5G端末のルーターの実証実験を行い、製品化に向け動きだした。同社ではクロスラボでの実験成果を評価し、今後も継続的に同ラボでの実証実験を活用していくという。

チーフプロデューサーの手嶋氏(右)とプロジェクトリーダーの松出氏

 TEQSのプロジェクトリーダーで5Gの実証実験を担当する松出晶子氏によると、昨年10月末の開設から2月末までに約150社がクロスラボを視察、先月下旬の近畿を含めた6府県の緊急事態宣言解除後は問い合わせも増えているという。

全国から利用可能

 クロスラボの利用は関西圏に限らず、全国の企業が利用できる。大阪市の21年度予算でクロスラボの活動を含めた5Gビジネス創出プロジェクトとして初めて5000万円が計上され、クロスラボは21年度から本格始動する。

 TEQSチーフプロデューサーの手嶋耕平氏は、クロスラボでの実証実験を経て事業化に至る企業が3年間で15社出てくることが目標と語る。

 5Gを利用することで、新たなビジネス創出の環境を提供するのがクロスラボの目的。手嶋氏はこのためにも大阪に限らず、全国どのスタートアップ企業もクロスラボを利用してほしいと呼びかけている。