2021.04.07 30年の「カーボンハーフ」を提唱東京都、新戦略でギアチェンジ

新戦略を打ち出した東京都庁(東京都提供)

50年ゼロエミッションに向けて、新たに策定された戦略。東京都のホームページなどで閲覧できる50年ゼロエミッションに向けて、新たに策定された戦略。東京都のホームページなどで閲覧できる

 東京都は、50年の二酸化炭素(CO₂)排出ゼロを目指すための目標や取り組みなどをまとめた戦略「ゼロエミッション東京戦略2020 Update & Report」を策定し、公表した。19年にまとめたものを、コロナ禍など「社会情勢の大きな変化を受けて、取り組みをさらに加速させる」(東京都)ために改訂した。今後10年間を重要視し、30年に向けた新たな目標を設定。スローガンなども提示し、集中的に取り組んでいく。

 東京都は、19年5月に世界の大都市の責務として、50年にCO₂排出を実質ゼロにすることを表明。同年12月に、実現に向けたビジョンとロードマップをまとめた「ゼロエミッション東京戦略」を策定した。

 直後から、新型コロナウイルスの感染拡大が世界で拡大した。豪雨や台風などの災害にも歯止めがかからないことから、取り組みの加速化が必要と判断。アクセルを踏み込むための「ギアチェンジ」として改訂版を作成した。

懸念されるリバウンド

 新戦略ではまず、「感染症の脅威」と「気候危機」との「二つの危機に直面」しているとの認識を示し、コロナ禍がもたらした世界の変化を分析した。

 経済活動の縮小などで、20年の世界のCO₂排出量は19年比で5.8%減少した。第2次世界大戦以降で最大の減少幅だという。だが、世界規模の金融危機に広がったリーマン・ショック直後の09-10年にかけては、一時的に減少したものの、その後は大きく反発して増加した経緯があり、コロナ禍後も「リバウンドが懸念」されるという問題を提起した。東京都環境政策課は「経済復興はやるべきことだが、気候変動にも対処できる復興の仕方が重要になってくる」と語る。

 そのために、新たな戦略で提示したスローガンが「カーボンハーフ」だ。30年への目標を強化し、都内から排出されるCO₂などの温室効果ガスを00年比で半減(ハーフ)させることを目指す。旧戦略の30%削減から大幅に引き上げた。「気候危機の影響の深刻さが増し、今こそ、行動を加速するタイミングになっている」(同課)との認識からだ。

 石油やガス、電力などの都内でのエネルギー消費量の目標も、同比で50%削減(旧戦略38%削減)することとし、再エネによる電力の利用割合を全体量の50%(同30%)にまで高めることも明記した。

 また、都内での乗用車の新車販売を全て非ガソリン車とすることや、非ガソリン車種が市場にまだ少ない二輪車でも、35年までに実施することを目標に加えた。

 50年のゴールを目指し、30年のカーボンハーフを実現するには、脱炭素に見合ったビジネスモデルやライフスタイル、都市づくりなどの再設計が求められるという。東京都は、こうした姿を「2030・カーボンハーフスタイル」として提起し、都民や事業者らへの行動変容を促していく考えだ。

着実に進む省エネ

 東京都は新戦略で、30年カーボンハーフ実現のため、目標を強化したのが、エネルギー消費量と再エネによる電力の利用割合だ。CO₂排出量を削減するため、「エネルギー消費量を下げていくことと、再エネを増やすことを両軸にする」(同課)狙いだ。

 都内でのエネルギー消費量は00年度から減少傾向が続き、18年度までに24.2%減少した。世帯数が伸びた家庭部門では0.7%微増したが、排出量の4割近くを占めて最多の業務部門や運輸部門などを中心に、都の助成などが奏功して、電気の節約など省エネが着実に進んだためだという。

 こうした省エネの進度にもかかわらず、温室効果ガス自体の排出量(CO₂換算)は、00年度の6220万トンから増減して推移し、18年度には6393万トンと微増する結果だった。

 同じ電力を使っても、発電時のCO₂排出量次第で環境への影響は変わる。東日本大震災の影響を受けて、火力発電を多用せざるを得なかったため、電力のCO₂排出係数が悪化し、都内で使用電力を減少させても、排出量削減にそのまま直結しなかったという。震災直後には6986万トン(12年度)にまで増えた時期もある。

 新戦略では、00年度の6220万トンを5割程度に削減することを目指す。同課は「再エネで代替することが一層進めば、相乗効果もありCO₂排出量は、着実に減っていく」と話している。