2021.04.30 【5Gがくる】ローカル5G簡単解説<40>企業内にローカル5G人財を育成する③
デジタルトランスフォーメーション(DX、デジタル変革)を推進しようとしたものの、うまくいかない理由を聞いていると、意外と技術的な問題ではないところでつまずいている場合が少なくない。
例えば、そもそもデジタルを活用したシステムの導入そのものを目標としていたため、業務プロセス変革まで至らなかったというものだ。
これは、検討時に現場における業務プロセスの課題や熟練者の意見を反映していなかったり、社内にDXに対応できる人材がいなくベンダーやSIヤー(システム構築企業)に丸投げしたりした際に起こっていることが多い。特に丸投げした際に情報漏えいを恐れて業務プロセスに関する十分な情報を提供しなかったことなども、つまずく原因になっていたりもする。
DXの人材が不足
2019年、IPA(情報処理推進機構)が発表した「デジタル・トランスフォーメーション推進人材の機能と役割のあり方に関する調査」によると、多くの企業がビジネス変革の必要性を強く認識している半面で、成果が出ている企業は少なく、その理由としてDX推進人材の大幅な不足を挙げている。
言い換えると、DXを目指す多くの企業がビジネス変革に不可欠なディスラプティブ(破壊的)な発想・思考を持ち、デジタルを活用して業務プロセスを改革でき、新たなビジネスを創造できる「人財」を求めているといえるだろう。いわゆるプロデューサーやビジネスデザイナーと呼ばれる、社内でDXを主導し、ビジネス変革を企画・立案・推進する人材だ。
そこで5G&DX推進人材にはどういうスキルが必要となるのか--。ビジネス現場における課題解決の流れを具体的な例とともに取り上げてみよう。
ここではまず、現場を知るビジネスパーソンと、デジタル技術に精通している技術者の2者に分け、DX推進人材は前者に属するものとする。
必要なスキルとしては、「課題の発見・明確化→業務プロセスの見直し→課題を解決する目標の設定」が第1ステップとなる。
例えば、工場での新人教育の場合を見てみたい。多忙な熟練者にとって、新人教育は大きな負担となり、今は濃厚接触による感染リスクもあるだろう。ここでの最終的な目標が熟練者による対面教育をせずに、対面教育と同レベルの教育効果を達成することだとすると、目標を達成するための仮説(デジタル技術を活用した新たな業務プロセス)の設定が、第2ステップとなる。
この領域では、IoTや5G、人工知能(AI)など、広範囲なデジタル技術の活用スキルが必要となる。と言っても、技術者に求められるような難解な技術そのものではない。デジタル技術を活用した新たなシステムをエンドユーザーが使い目的を達するシナリオが描ければよい。一般的には具体的な利用シーンであるユースケースを描くスキルだ。
ユースケース示す
例えば、超高速を実現するローカル5Gを導入して、熟練者の細かな動きや手順を習得できる4K/8K映像や、熟練者の模範映像を見せながら実習させる拡張現実(AR)による新教育プロセスへ変革するといった、明確なユースケースを示せることが重要になる。これを経営者に説明し、理解と支援が得られれば、小グループ活動による業務プロセス変革への道が開く。(つづく)
〈筆者=モバイルコンピューティング推進コンソーシアム上席顧問・国士舘大学非常勤講師・竹井俊文氏〉