2021.05.14 【5Gがくる】ローカル5G簡単解説<41> 企業内にローカル5G人財を育成する ④

 筆者は曲がりなりにも講師として、30年余り、その年その年で話題になっている技術などをテーマとして教鞭(きょうべん)を執らせてもらっている。今まさに企業や学校で新年度の教育が始まっているが、登壇した際に最初に目に入るのが若者たちのすがすがしい眼光だ。

 彼らは意気揚々として教育に臨んでいる。毎年多くの新人に接していると「今どきの若者は今の社会をどう見て何を期待しているのだろう」ということが気になる。

AIに仕事奪われる

 そこで今年もデジタルトランスフォーメーション(DX、デジタル変革)をテーマとした講義の導入部で受講者に「将来、あなたの仕事は人工知能(AI)に奪われると思いますか?」という質問を投げ掛けてみた。

 その理由は、DXの導入にはIoTや5G、AIなどのデジタル技術が不可欠で、中でもAIは従来のビジネスを根本から変革させる可能性があると同時に負の影響も懸念されているからだ。

 この質問に対し昨年までは「自分の仕事がAIに奪われると思う」と答えた若者の割合が少なかった。ところが、今年はその割合が大きく増えた。その背景にコロナ禍があるように思える。今まで起こらなかったことが突然起きるという現実をまざまざと見せつけられたからだろう。

 さらに驚いたのは、彼らは「AIでもできる仕事はロボットに任せて、人間にしかできないクリエーティブな仕事やヒューマンコミュニケーションが求められる仕事に専念したい」と言い、DXによるビジネス変革を歓迎している点だ。

 ある意味、少子高齢化社会を担わなければならない世代の彼らにとって当然なのかもしれないが、DXについては肯定的だ。もちろんデジタル化すると多量のデータが発生するためネットワークを超高速にしなければならない。さらにAIを活用しロボットを制御するためには、ネットワークを超高信頼・低遅延にする必要がある。このようなビジネス現場で抱える課題をローカル5Gの導入で解決していくことの必要性についても、彼らは理解が早い。

少子高齢化による深刻な「生産労働人口の激減」から人間とAI&ロボットが適材適所で「協働」

 翻って5GなどをはじめDXを推進したいと思いつつ、なかなかうまくいかず悩んでいる経営者にとっては、このような新人は大きな戦力となるだろう。

斬新なアイデア出す

 前回は5G&DX推進人財のスキル(素養)について述べたが、社内の5GやDXを推進するグループの一員として新人を抜てきしてみるといいかもしれない。現場ビジネスに精通した先輩社員と共にデジタル技術を活用した新たな業務プロセスのユースケースを描かせるのも一手だろう。スマホ世代の新人はエンドユーザー視点で斬新なアイデアを出してくれるに違いない。

 ただ、彼らにはあらかじめ、IoTや5G、AIなどデジタル技術の基礎や、これらを活用したデータ駆動型ビジネスの実践例を教えておく必要がある。

 しかし、中小企業にとっては長期間離脱の集合教育は荷が重いし、講師もいない。その場合、空いた時間に自習できる教育コンテンツが役に立つ。

 次回はローカル5Gの自習教材を紹介する。(つづく)

〈筆者=モバイルコンピューティング推進コンソーシアム上席顧問・国士舘大学非常勤講師・竹井俊文氏〉