2021.06.21 【冷蔵庫特集】大容量タイプの需要好調

コロナ禍で大型品への関心が高い冷蔵庫

コロナ禍で大型品への関心が高い冷蔵庫コロナ禍で大型品への関心が高い冷蔵庫

IoT冷蔵庫は、IoT化の利点をいかに訴求できるかが鍵を握るIoT冷蔵庫は、IoT化の利点をいかに訴求できるかが鍵を握る

コロナ禍で内食傾向が強まる

 大容量タイプの需要が好調な冷蔵庫。基本的な役割である食材の鮮度保持性能や、たくさんの食材を保存できる庫内容量の確保、電源を落とすことがないために求められる省エネ性に加え、IoT化も進んできた。新型コロナ禍で生活スタイルが変わりつつあり、キッチンの中心にある冷蔵庫の役割が広がり始めている。

 日本電機工業会(JEMA)の統計では、2020年度の冷蔵庫の国内出荷台数は392万台。前年から1.3%増にとどまったが、401リットル以上の大容量タイプは4.4%増となり、需要全体をけん引している。

 特に昨年は1人10万円という特別定額給付金の支給が家電需要を押し上げた。大型品や高付加価値品へと使われる傾向があり、冷蔵庫もその恩恵を受け、夏商戦と重なった7月には前年同月比で1割弱の伸長を見せた。

 コロナ禍で在宅勤務が急速に広がり、昼間も自宅で食事をする人が増えた。これまでも内食傾向は強まっていたものの、それが急速に進んだ格好だ。

 その分、家事負担が増えて簡単に調理できる冷凍食品の需要も増加。冷蔵庫では、冷凍室の容量が大きなタイプのニーズが強まるとともに、冷凍庫を追加購入する動きも顕在化した。

 冷凍食品に限らず、作り置きの料理や野菜、飲料など、日々の食生活に必要な飲食物を保存する量は全体的に増えている。これが、大容量タイプを求める需要を一層加速している。

 緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が発令され、新型コロナの感染拡大に予断を許さない状況が続いたこともあり、401リットル以上の大容量タイプは4月まで7カ月連続で前年実績を上回る出荷台数を記録している。冷蔵庫全体でも1割弱伸びる好調さとなったが、401リットル以上に限ると17%以上の増加となり、伸びは顕著だ。1年以上続くコロナ禍での生活で、冷蔵庫の大型化を検討する潜在客層が増えていることがうかがえる。

 夏に向けて冷蔵庫はもともと需要が上向く。こうした需要を捉えようと、JEMAでは、夏への節目である夏至の日(6月21日)を「冷蔵庫の日」と定め、冷蔵庫の上手な使い方の紹介などを行う啓発活動を実施している。

 ウェブサイトでは、「大容量冷蔵庫ならおうちが快適」をテーマに、大容量冷蔵庫の機能や選び方、上手な使い方、各家庭に合った容量などを解説。動画も用意して分かりやすく訴求する内容にしている。アンケートに答えると松阪牛などが抽選で当たるキャンペーンも7月31日まで実施し、需要喚起につなげようとしている。

 家電量販店でも、ボーナスが支給される需要期に向けて、コロナ禍に合わせたPOPの展開など、冷蔵庫売り場の強化に乗りだしており、店頭も盛り上がり始めている。

冷蔵庫のIoT化が加速
購入後も機能をアップデート

 冷蔵庫のIoT化が加速し始めた。今年2月に三菱電機がIoT対応した冷蔵庫を発売したことで、国内の大手家電でIoT対応が出そろった。IoT化で冷蔵庫の新たな価値を示そうと各社は取り組んでいる。

 IoT化の利点の一つとして各社が提案に力を入れているのが、見守り機能だ。離れて暮らす家族の活動状況を使用実態から把握し、一定期間扉の開閉が確認できない場合などにスマートフォンにプッシュ通知する仕組みだ。食事という、人の生活に不可欠な行為に密着する冷蔵庫の特性を生かしたIoT機能と言えるが、利用が浸透しているとはまだ言い難い。

 シャープのように、冷蔵室のドアに小型のディスプレーを搭載して、スマホからのメッセージを表示するといった「伝言板」のような使い方を提案する動きもある。家庭内でも頻繁に使われる冷蔵庫の特性を生かしたもので、IoT化でその役割も変化しつつある。

 スマホが生活の中心に置かれるようになり、その多機能さを生かそうとする傾向も強まっている。パナソニックは、スマホのGPS機能を活用することで、自宅から離れると「外出」と判断し、節電モードに移行するなど、従来マニュアル操作が必要だった制御を自動化するなどに生かしている。

 冷蔵庫がIoT化すると、常時クラウド環境につながることになる。それを生かして購入後も機能をアップデートできるのが魅力だ。他機器との連携も進めており、シャープはオーブンレンジなどの調理家電で対応。三菱電機も家電の統合アプリケーション「MyMU(マイエムユー)」で、冷蔵庫を他機器と連携させることも視野に入れている。

 冷蔵庫は基本性能が重視されるため、IoT化の訴求力は現状、さほど強くない。量販店の売り場でも大きな訴求は一部にとどまる。

 一方、メーカー主導でさまざまなIoT機能が提案されるようになってきた。その「便利さ」を実感したユーザーにとっては、IoT化は必要な機能へと変わる。新製品での提案に加え、購入後のアップデートで使い勝手の良い機能をいかに提案できるか―。IoT冷蔵庫の提案は、今後ますます過熱しそうだ。