2021.07.01 加熱せずチタン合金表面に硬質窒化層形成ヤマハ発動機など研究グループ、航空機や自動車など用途拡大へ
ヤマハ発動機、静岡大学工学部・菊池将一准教授、東京電機大学・井尻政孝助教(研究当時/現・東京都立大学システムデザイン学部助教)の共同研究グループは、加熱することなくチタン合金表面に硬質な窒化層を短時間で形成させることに成功した。
チタン合金は軽くて強くてさびない性質を持つため構造材料として実用されているが、適用範囲拡大には、摩擦摩耗特性に乏しいという欠点の克服が不可欠とされる。
現在は窒素拡散を利用してチタン表面を硬くしたり、摩耗に強い膜をコーティングすることが主流だが、いずれの手法もチタン合金を長時間加熱する必要があり、チタン組織の粗大化を引き起こして強度が低下する。そのため、加熱を必要としない短時間表面硬化プロセスの開発は、チタン合金の多機能化のブレークスルーとなる。
共同研究グループは常温・大気環境で窒素含有微粒子を高速投射するプロセスにより、チタン合金表面に硬い窒化層が形成されることを明らかにした。処理時間はわずか30秒ほどで、従来処理と比較して処理時間を大幅に短縮。さらに、従来手法の課題であった加熱によるチタン合金組織の粗大化も防ぐことができた。
窒素を含む微粒子を高速で衝突させて常温・大気環境でチタン合金の表面に窒化層を形成し、衝突時に窒素を含む微粒子がチタン合金表面に付着する現象を利用した。従来の窒化処理と比較して、窒化層の形成速度が高いことや、チタン合金の表面組織が微細化されることを見いだした。
研究成果は優れた摩擦摩耗特性と強度特性を併せ持つ多機能チタン合金の開発につながり、航空機、自動車、生体医療分野などへの応用展開が期待される。