2021.07.15 【e-messe kanazawa特集】IoT通信環境実証試験北陸電力など携帯エリア外の有峰ダムで

有峰ダムに設置された親機

北アルプス太郎平小屋の様子北アルプス太郎平小屋の様子

端末「ジオチャット」。位置情報付きでSOS発信も可能端末「ジオチャット」。位置情報付きでSOS発信も可能

 登山者らの安全安心を確保する目的で、北陸電力は6月から、ICTサービスのフォレストシー(東京都江東区)など3者と協力し、携帯電波圏外エリアの有峰ダム(富山市)で、IoT通信環境の実証試験をしている。

 山間地など携帯電波圏外では、携帯しか持っていない人が遭難やけがをした場合、連絡手段がなく救助要請が困難な状況に陥っていた。

 北陸電力では山間部の業務従事者の安全確保と設備監視のスマート化を目的に、携帯とは別の通信方式によるデータの取得方法について検討を進めていた。今回、登山者の安全安心を確保しようと、山小屋を運営する五十嶋商事(富山市)、富山大学など4者共同での実証試験を開始した。

 実証では、フォレストシー独自の長距離無線通信技術(LPWA=Low Power Wide Area)を活用し、北陸電力の有峰ダムに親機を、周辺の山小屋に中継機を設置して通信インフラを構築。登山者らに端末を配備して、機器相互の通信状況(登山者の位置情報の把握、メッセージの送受信)や通信可能エリアを調べる。富山大学は、端末を用いた中山間地域での無線通信調査、データの分析、活用を検討する。実証期間は2022年2月(現地は降雪前の10月)までの予定。

 今回は北陸電力がメンバーとなりクラウドサービスを活用した仕組みにしたため、山間部だけではなく国内外での通信が可能になった。モニター端末を設置すれば山崩れや河川の氾濫状況なども監視できる。

 フォレストシーは「今後も北アルプスの通信インフラ整備を通じて、防災や観光など地域の課題やニーズに対応して地域の発展に貢献するとともに、富山県をはじめ全国の安全・安心に寄与していきたい」と話した。