2021.08.20 NICT超高精度・広帯域の小型周波数カウンター開発

今回開発したテラヘルツ周波数カウンター

テラヘルツ帯で動作

 情報通信研究機構(NICT)は、半導体超格子ハーモニックミキサーを用いたテラヘルツ波用の周波数計測システムを開発し、電波の上限帯域を網羅する0.1テラ~2.8テラヘルツという広帯域で精度16桁の計測を行った。小型・室温下で動作する広帯域・高精度なテラヘルツ周波数カウンターが実現した。

 この技術は、未開拓周波数領域と呼ばれてきたテラヘルツ帯を次世代情報通信基盤Beyond 5G/6Gにおける新たな電波資源として利活用するための計量標準技術となる。

 Beyond 5G/6Gの貴重な周波数資源として、テラヘルツ帯の利活用に高い関心が寄せられている。テラヘルツ帯を有効利用するには、スマートフォンなどで利用されているマイクロ波・ミリ波帯の電波資源と同様に、多様な産業や研究に向けて周波数バンドを正確に区分でき、適正な運用を可能にする計量標準技術の確立が重要だ。

 これまで、テラヘルツ周波数計測システムの多くは、高感度化のために大型の低温装置や複雑な機構を持つ超短パルスレーザーが必要だった。そのため小型化が難しく、装置のオペレーターには光学機器の取り扱いが求められた。また、計測は可能だが動作帯域が狭い、もしくは、動作帯域は広いが計測限界が未確認など、装置の動作帯域と計測精度に関する包括的評価も不十分で、実用化を視野に入れた際に解決すべき課題が残っていた。

 今回テラヘルツ波の計量標準技術として、4オクターブを超える広帯域0.1テラ~2.8テラヘルツにおいて精度16桁の計測を実現した。

 超格子構造を持つ半導体ハーモニックミキサーをキーデバイスとして採用することで、入力したマイクロ波帯の局部発振器信号を基にテラヘルツ基準を等間隔に多数生成。それらを広範囲に分布する「精密な目盛り」にしてテラヘルツ波の周波数測定を可能にした。

 これは、1テラヘルツの電波周波数を100マイクロヘルツ(1テラヘルツの10の16乗分の1)以下の精度で決定できることに相当する。小型かつ室温動作するテラヘルツ周波数カウンターの動作帯域幅と計測精度として、共に世界トップの性能を誇る。