2021.10.13 どこでも発電の「エナハ」とは?樹液が「電源」役、立命館大など実証へ
実証実験のハウスのもよう
「エナハ」という言葉が最近、産業界のトレンドの一つになっているらしい。身の回りのちょっとした振動やわずかな熱など、ふつうは無視されるような小さなエネルギー源をもとに発電する「エナジー・ハーベスティング」や、その装置(ハーベスタ)などを指す。こうした「環境発電」とも呼ばれる分野は長年、研究が進んでいるが、電池などが不要で機器類のメンテナンスが省けるとして、IoTでも注目されている。そんな「エナハ」を活用し、アフリカでスマート農業を進めるための実証実験が、国内で始まる。
立命館大学や、新興商社のデガス(東京都渋谷区)、ミネベアミツミグループのエイブリック、浅井農園(津市)が計画を発表した。
作物が無事に育っているかどうかや、土壌が乾いていないかどうかなどはふつう、生産者が見回りをして調べる。カメラなどでモニターすることも可能だが、通常は電源が必要になる。
研究者らが注目したのは、作物の樹液。根っこに電極をさし、発電する手法を考え出した。もし乾燥が進んだり、作物の樹勢が衰えたりすれば、樹液にそれが反映され、発電量が変化するという仕組みだ。電源がない農地でも、センシングができる。こうしたデータを通信で把握すれば、作物の生育状況をリアルタイムでモニターできる。
ガーナなど貧困農業国での実用化をめざし、気候の似た沖縄県宮古島市で、カカオやバニラなどを栽培して実験する。実験室段階ではうまく機能することがわかった。肥料やりがきちんとできているかどうかも、間接的にわかるという。
現地では今後、日照など環境のセンシングデータや、画像データなどとも組み合わせ、省人化で効率的なシステム開発をめざすという。「開発の遅れているアフリカの貧困国で、最先端のスマート農業を」という狙いだ。
植物工場などに適用できる可能性があるといい、担い手不足に悩む国内の農業支援にも一役買いそうだ。
エナジーハーベストは、様々な分野でかねて開発が進む。大きな電力を生み出すことは難しくても、場合によっては細菌の活動なども生かし、小さな電力を生みだせる。研究を共に進めている立命館大学の道関隆国教授と、センサー用のモジュールを提供するエイブリックは「今後もさまざまなアプリケーションをめざす」と意欲を見せる。
(14日の電波新聞・電波新聞デジタルで詳報します)